トップAV女優・紗倉まなが語る、小説で「老人の性」を描いたワケ

最新作『春、死なん』を語る
週刊現代 プロフィール

「女性の役割」との葛藤

――もう一つ収録されている「ははばなれ」では、不妊に悩む女性・コヨミが、母が自身を生んだ帝王切開の痕から「女性の性」に考えを巡らせます。所収の2編は「老人の性」や「女性の性」など、他者から与えられた「役割」について深く洞察された物語ですね。

富雄は孫の静香から「おじいちゃん」としての役割を求められる一方で、それにはそぐわない性欲を抱え、自身の尊厳に悩みます。

でも、私がエロをお仕事にしているからかもしれませんが、どんなに年齢を重ねようが「性の枯渇」はないと信じていて、富雄の性への渇望は、尊厳として受け入れてほしいと思って。

たとえば「ゲートボールをする高齢者」や「良妻賢母」のような「役割」を、誰もが無意識に押し付けられている。でも、そんなしがらみからは一度解放されて、自分が希望とする動き方、生き方を選べた方がいいと思うんです。

 

私もAV女優として、求められる役割に悩むこともありますけれど、いまは理想を切り離して、自分のやりたいエロいことを表現できるようにしています。

ものを書くことや、歌を歌うことも、もちろん本職のエロもいま、すごく充実している。

AVも小説も、自分を表現するための手段の一つであり、今や私にとって切り離せないもの。小説で興味を持って、AVを見る機会に繋げてもらえたり、AVをきっかけに本書を読んでもらえたりすると、とても嬉しいです。(取材・文/伊藤達也)

紗倉まな(さくら・まな)
'93年千葉県生まれ。工業高等専門学校在学中の'12年にAVデビュー。'15年にはスカパー!アダルト放送大賞で史上初の三冠達成。'16年に初の小説『最低。』を発表する。著書に『凹凸』『働くおっぱい』など

「週刊現代」2020年3月14号より