新型コロナ「世界的危機」が、日本人の想像以上に深刻である理由

戦略論的分析から見えてくること
佐藤 丙午 プロフィール

おそらく、問題が生じる理由の一つは、科学技術者は科学的な意味で必要十分性を重視するのに対し、社会はリスクに対して社会的十分性を求める、というギャップが存在するためである。

科学者は科学的に証明可能な事実に基づいた対応が必要と考えるが、社会にとっての事実は、リスクの程度によって変化する。これを科学的知見と社会の関係において、科学的「絶対性」と社会的「相対性」の差と表現することも可能であろう。

それを踏まえて、新型コロナ問題の終結について考えてみよう。

未知のウィルスとの戦い

COVID-19の問題は、人類の歴史の中で繰り返されていた、未知のウィルスとの戦いの一つである。

ウィルスとの戦いでは、ウィルスの根絶が困難であることを前提に、人間がウィルスと物理的に距離を置くか、人間の体内に抗体を「作り」、ウィルスを無力化することで、その影響を排除することになる。

抗体を作る上で、人工的にワクチンを製造して人間に接種して抗体を作るか、感染症に感染して抗体を持つようになった人間が社会集団内で多数を形成することによって得られる「集団免疫」により、ウィルスの影響を封じ込める方法がある。

つまり、COVID-19との戦いにおいても、この三つが終結点(ゴール)になる。ただし、この三つの終結点の実態上の「定義」と、到達するための方法に、多様な政策上の工夫が出てくる。各国がそれぞれ異なる終結点を目指し、政策手段の調整を行わない場合、時間の要素が重要になる。

感染症では、その出発点から様々な経路を経て感染が拡大する中で、地域ごとに時間差が生じる。時間差が生み出すものの実体は、感染症に対する社会のパニックの連鎖である。そこに国際調整がない限り、各国政府は相対利得に基づいて終結点と政策手段を考案する。特に民主主義国では、国民の感情を無視することはできない。

 

逆に言うと、COVID-19の問題でも終結点や手段において国際協調をとることができれば、感染症問題への対応は及第点を与えることができる。

世界保健機関(WHO)が調整役を務めると共に、各国の保健衛生関係者間での情報共有と対話があれば、国際協調は難しくない。

特に未知のウィルスという人類共通の敵に対応する上で、国際社会が一致結束して対応に当たることが全体の利益となるため(いわゆる絶対利得)、合理的に考えれば、協力しない理由がない。

編集部からのお知らせ!

関連記事

ABJ mark

ABJマークは、この電子書店・電子書籍配信サービスが、著作権者からコンテンツ使用許諾を得た正規版配信サービスであることを示す登録商標 (登録番号 第6091713号) です。 ABJマークについて、詳しくはこちらを御覧ください。https://aebs.or.jp/