(c)「TEZUKA 2020」プロジェクト

AIが手塚治虫の漫画に挑んだら…本当の「働き方改革」が見えてきた

前代未聞の漫画『ぱいどん』を無料公開

漫画の神様、手塚治虫氏の「新作」が発表された。

「手塚治虫が現代に生きていたら、どんな未来を漫画に描くだろうか」――キオクシア株式会社をプロジェクトリーダーに、手塚プロダクション、AI研究者によるプロジェクトTEZUKA2020が始動した。そして同プロジェクトより生まれた『ぱいどん』が、2020年2月27日発売の『モーニング』(講談社)に掲載された。

人間と「AI技術」とが融合することで、手塚治虫氏の作品を新たに生み出すという前人未到の試みは、達成できたのだろうか。そして、この野心的な試みを通じて、プロジェクトチームメンバーは、何を得たのだろうか。AIと人間によるマンガ制作における「クリエイティブ総指揮」を担当した、手塚プロダクション取締役の手塚眞氏と、人工知能研究者で『人工知能はなぜ椅子に座れないのか』(新潮社)の著者である松田雄馬氏が、人間と「AI技術」の可能性を模索する――。

撮影/浜村達也

本対談を記念して『ぱいどん』前編を無料公開します。是非お楽しみください!

手塚眞(てづか・まこと)
1961年、漫画家・手塚治虫の長男として東京に生まれる。ヴィジュアリスト。主な監督作品に「星くず兄弟の伝説」「白痴」「ばるぼら」。著書に『ブラックモーメント』『ファントム・パーティ』『ヴィジュアル時代の発想法―直感をいかす技術―』『手塚治虫―知られざる天才の苦悩―』などがある。一般財団法人手塚治虫文化財団代表理事。株式会社手塚プロダクション取締役。有限会社ネオンテトラ代表取締役
松田雄馬(まつだ・ゆうま)
1982年9月3日生まれ。大阪出身。博士(工学)。京都大学卒業。同大学院修了後、2007年NEC中央研究所に入所。東北大学との脳型コンピュータプロジェクトを立ち上げ、2015年同研究にて博士号を取得し、その後独立。2017年、AI/IoTを中心とした新規技術開発を行う合同会社アイキュベータを設立、同社共同代表に就任。著書に『人工知能の哲学』(東海大学出版会)、『人工知能はなぜ椅子に座れないのか』(新潮社)などがある

アトムが誕生する「2030年」はどんな未来なのだろう

松田:本日はよろしくお願いします。さて、『ぱいどん』が掲載された『モーニング』の売り切れが続出しているとか。高い関心があるようですね。そもそも、「TEZUKA2020」のプロジェクトはどのようにして始まったのですか?

手塚:手塚治虫の代表作の一つに『鉄腕アトム』があります。実はアトムは、今から10年後の2030年に誕生するという設定です。その2030年とはどんな未来なんだろうと模索する中で、現代の最先端AI技術を研究する大学の先生方に会い、「手塚治虫」AIで再現するプロジェクトをやってはどうか、という提案をいただいたのが始まりでした。

松田:手塚治虫先生を再現する――とは具体的には、手塚治虫先生が新しい漫画の着想を得るために作っていた「構想ノート」のような役割を果たすものを作り出すことだとお聞きしています。そこでのコアが、慶應義塾大学の栗原聡教授が開発した「AI技術」を駆使して、漫画のシナリオ作成とキャラクターデザインを行うことだったのですね。

手塚:先生方の研究は良かったのですが、それだけでは不十分で、プロジェクトを進める推進力が必要でした。そんななか、昨年に幸運にもキオクシア株式会社から声がかかった。企画を実現していくにあたって、プロフェッショナルの技術者の参入は大きな力になりました。

 

松田:「AI技術」と聞くと、すべてAIがデータを見て判断して勝手に成長していくイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、実際は、どのようにデータを加工して学習させるかなどは高度な専門知識が必要で、かつ、地道な作業によるところも大きいです。プロフェッショナルであれば、そうした地道な作業にも、力を入れるべきところとそうでないところの勘所がわかっているので、キオクシア株式会社のエンジニアさんが担った役割は大きいのですね。

「手塚治虫」の「塚」の字は旧字が正式表記です