新型コロナ危機で露呈、グローバル化世界の「厳しすぎる現実」

「普通の日々」は戻ってくるのだろうか
笠原 敏彦 プロフィール

さらに深刻なことは、現時点でEU統合が深化する兆しはなく、この中途半端な二重統治構造が改善される見通しもないことである。

EUは南北と東西の対立で亀裂を深めている。グローバルな危機が再び訪れても、EUは同様の失敗を繰り返すことだろう。

イタリアの深刻な危機

EUの緊急対応能力の問題は、劇的に危機が悪化したイタリアのケースを見れば、その深刻さが一層鮮明になる。

イタリアは2月という早い段階からEUにSOSを送って医療支援を求めていたが、加盟国の反応は鈍かった。それどころか、イタリアの危機を尻目に、連帯へのリーダーシップを発揮すべきドイツやフランスは3月に入り、マスクの輸出禁止や国家管理に乗り出そうとさえしたのである。

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そのEUの結束の欠如を突いたのが中国だ。中国はイタリアへの医療チーム派遣や支援物資提供を積極的に行い、恩を売っている。

イタリアは、G7(先進7カ国)で初めて中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に協力する覚書を交わした国だ。その人道支援は評価すべきだが、EUの分断による影響力拡大を追求してきた中国の外交的見返りへの期待は推して知るべしである。

 

危機管理能力の低さを繰り返し露呈するEU。本当に必要なときに支援を提供できない欧州統合プロジェクトとは一体、何のためのプロジェクトなのか? 

パンデミックが一段落した後で、EUが向き合う課題となることだろう。