新型コロナ危機で露呈、グローバル化世界の「厳しすぎる現実」

「普通の日々」は戻ってくるのだろうか
笠原 敏彦 プロフィール

グローバル化のリスク

まずは、グローバル化世界とパンデミックの関係である。

パンデミック禍の特徴の一つは、病気感染への不安以上に経済的な脅威への不安が大きいことではないだろうか。

景気後退や企業倒産、失業、品不足、生活窮乏などへの不安である。

これはグローバル経済の本質に関わることだろう。リスク面を軽視して効率を最優先する経済活動の在り方である。

分かりやすい例は、様々な国を結ぶサプライ・チェーンの最適化により在庫を最小化する製造業の在り方だ。国境を越えた「必要なものを、必要なときに、必要なだけ」という国際版ジャスト・イン・システムである。

その脆弱性は類似の危機の度に指摘されてきたものである。

イギリスの欧州連合(EU)離脱=ブレグジット=問題でも、自動車産業を中心に「合意なき離脱」ならサプライ・チェーンが麻痺するとして金科玉条のように祭り上げられてきた。

ブレグジットのケースではイギリス政府を悪玉にすることができるが、ウィルスを批判しても無意味である。

つまり、システム自体が脆弱であり、持続可能でないとことを露呈したということだろう。

グローバリズムは「人、モノ、カネ、サービス」が自由に国境を越えることを志向する。

それが突如急ブレーキをかけたように止まるのだから、観光・運輸業は言うに及ばず、金融、サービスなどほぼ全てのビジネス分野において影響が甚大にならないはずはない。

要は危機に対するリスク管理の問題なのだが、国際競争の激化、株主利益優先、利潤最大化を追求する現状の企業統治では重視されてこなかったということである。

国境を越えた人の往来の活発化も含め、近年のグローバリゼーションはウィルスの破壊力増大に最適な環境を提供してきたということだ。

 

21世紀前半に急速に進展するグローバル化、デジタル化は、社会の在り様を大きく変えることから「disruption(破壊、断絶)」というキーワードで語られるようになっている。

そこに新たな破壊要因として、未知のウィルスが顕在化した。

ウィルス禍が一過性のものでないことは明らかであり、今後は、グローバル経済の安全保障という観点から経済活動の見直しを迫られることだろう。