日本を蝕む「ネバーエンディング・クレーマー」の生態とその対策

野党も、お客も、国民も…
大原 浩 プロフィール

お客様は大事だが神様ではない

歌手の三波春夫といえば、「お客様は神様です」というフレーズが思いこされるであろう。三波春夫のオフィシャルサイトによれば、生前のインタビューで、

「歌う時に私は、あたかも神前で祈るときのように、雑念を払ってまっさらな、澄み切った心にならなければ完璧な藝をお見せすることはできないと思っております。ですから、お客様を神様とみて、歌を唄うのです。また、演者にとってお客様を歓ばせるということは絶対条件です。ですからお客様は絶対者、神様なのです」

と述べていたそうだ。その心意気には共感するし、だからこそ、国民的歌手になれたのだと思う。しかし、小売業などのビジネスで「経営者が従業員に押し付ける」言葉では決してない。

多くの企業では、従業員教育の中で「顧客優先」=「お客様は神様」的なことを教えている。しかし、従業員も顧客も同じ人間で対等であることはほとんど教えていない。

経営者は従業員に「お客様は神様だから逆らってはいけない」と教える。だから、会社の方針に従順な社員ほど、客のどのような激しいクレームも耐え忍び、罵倒され土下座をさせられても我慢する。

最悪なのは、従業員に「お客様は神様だ」と教えている経営者や幹部が、大概の場合「お客様は神様だというのは建前だ。お客なんかくそくらえ。適当にあしらえば良い」と心の底では思っていることである。

以前、いくつかの地方自治体で「窓口手当」なるものが問題になったことがある。要するに、窓口で住民に対応するのは、みんなが嫌がるストレスのかかる仕事だから、特別手当を払うということだ。

いくら、口先で「お客様は神様だ」と言っても、企業幹部が外注のコールセンターや派遣社員に顧客からの難しいクレームを押し付けていることは、顧客の方にもわかる。

 

だから、「責任者を出せ!」ということになり、どんどん大ごとになるのだ。

しかも、顧客の方は「お客様は神様だ」と言われているから、「神様に経営トップが対応しないのか!」と激怒することになる。

さらに、現場の従業員が米つきバッタのように謝罪しているのに、経営幹部の指示によって企業としての非は決して認めないという矛盾した姿勢が新たなクレームを生む。