「できる人」との出会いが子どもを変える

人間的な魅力を育む土壌となるものは、習い事だけではありません。僕は、子どもの魅力を育む大きな支えとなるものの1つは、「人との出会い」だと考えています。

僕が魅力的な教師になれているとしたら、それはこれまで多くの魅力的な先生たちの教えを受けてきたからです。そもそも教師になるという決断をしたのも、彼らから「先生」という仕事の素晴らしさを教えていただいたから。最終的に決断を下したのは僕自身ですが、自ら決めたようでまわりに決断させられた側面もあります。もしもいい起業家に多く出会っていたら起業家になっていたかもしれません。いい警察官に大勢巡り巡り合っていたら、警察官になっていたことだって考えられます。

子どもをサッカー選手にしたいなら、サッカー選手と出会えるチャンスを作ってあげるのがいちばんです。できる人と触れ合う機会が多ければ多いほど、できるという気持ちになれます。スポーツの世界ではそれは「バニスター効果」と言われています。

かつて1マイル(約1.6㎞)を4分未満で走ることは無理だと考えられていました。エベレスト登頂や南極点到達よりも難しいとさえ言われていたのです。しかし、オックスフォード大学医学部の学生ロジャー・バニスターさんは科学的なトレーニングを重ねて、世界で初めて4分の壁を破ります。するとその1年後には一気に5人もの選手が、雪崩を打つように1マイル4分の壁を破ったのです(現在の世界記録は3分43秒13)。

日本の陸上界でも、男子100メートルで1998年に伊東浩司さんが10秒00の日本記録を出してから20年近くその記録は更新されませんでした。ところが、2017年に桐生祥秀選手が9秒98で日本人初の9秒台をマークすると、2019年にはサニブラウン・アブデル・ハキーム選手、小池祐貴選手がそれに続きました。

できる人との触れ合いを増やすために、たとえばホームパーティを開き、ママ友やパパ友の知り合いを連れてきてもらうのも一案。研究者、パイロット、画家、料理研究家、DJのように、子どもが触れ合った経験がないような人が遊びに来てくれるかもしれません。違う種類の大人に出会うと子どもは大いなる刺激を受けます

英語を学ぶ価値も、そこにあります。日本語しか話せない日本人だけではなく、英語を話す外国人とも積極的に交流できるようになれば、多種多様な人と出会って刺激を得ることができるからです。

両親が会って話したいなと思う方を呼び、その人の話を親子で聞くだけでも、新しい学びになる。それが国を超えれば、その学びも国を超える Photo by iStock

さらに言うなら、何も偉人に会わなければいけない、ということはありません。
今日の僕は、明日の自分にまだ出会っていません。保護者が新しいチャレンジを続けて日々成長すれば、子どもは毎日新しいお父さん、お母さんに出会えます。それだって新しい出会いとなり、成長につながるのです。

身近な大人が作る「空気」が、子どもが育つ「環境」となります。ぜひ、保護者自身がチャレンジし、成長し続けようとする姿を見せて、子どもに最高の環境を用意してあげてください。
  

撮影/山本遼
正頭英和 Hidekazu Shoto  
立命館小学校教諭/ICT教育部長。1983年大阪府生まれ。関西外国語大学外国語学部卒業。関西大学大学院修了(外国語教育学修士)。京都市公立中学校、立命館中学校・高等学校を経て現職。「英語」に加えて「ICT科」の授業も担当。2019年、「教育界のノーベル賞」と呼ばれる「Global Teacher Prize(グローバル・ティーチャー賞)」トップ10に、世界約150ヵ国・約3万人の中から、日本人小学校教員初で選出される。AI時代・グローバル時代の教育をテーマにした講演も多数。

世界トップティーチャーが教える
子どもの未来が変わる英語の教科書


グローバル化により言語や国のボーダーが壊され、AIが数々の職業を奪うと言われる今。これまでの教育・子育ての常識が通用しなくなる時代を迎えています。自分たちの価値観をベースに、自分たちが受けた教育を子どもたちにそのまま与えていても、このAI時代、グローバル化する社会を生き抜いていけるとは限りません。子どもが成長してから後悔しないためには、大人たちはこれまで信じてきた常識のシフトチェンジに対応する必要があります。国内のICT(インフォメーション&コミュニケーション・テクノロジー)教育を牽引する著者が、「英語力」と「行動力」をキーワードに、大人たちはどのように意識をアップデートするべきなのかを提言します。