やめることで
新しいチャレンジができる

ICTの発展がなくしたものは、時間と距離の壁です。イギリスの大英博物館やアメリカのメトロポリタン美術館などでは、VR技術を応用して展示物が目の前で見られるような臨場感溢れるサービスを開始しています。飛行機に乗ってわざわざ時間をかけて見に行かなくても、日本の学校や家にいながらにして、海外の名作が目の前にあるように鑑賞できるようになったのはICT技術のおかげです。

これはほんの一例ですが、各分野で省力化と効率化が進んだ結果、膨大な時間が生まれました。子どもたちの無限大の潜在能力を引き出すために、その増えた時間を何に使うかがますます問われる時代となっているのです。使える時間が増えたとはいえ、それでも有限であることに変わりないからです。

このシリーズの第2回でも述べたように、AIやロボットが進化するほど、人間ならではの経験と行動に裏付けられた個性が重視されます。その個性を育むのが子ども時代の学び。何に時間を投資するかが、子どもたちの未来を決定付けます。

子どもが飽きて「やめたい」と訴えているのに「一度始めたら、途中で投げ出すな」とやめさせなかったら、無駄かもしれないことに子どもの貴重な時間を浪費する可能性もあります。それ以上無理に続けても、子どもが飽きているとモチベーションが下がり、上達も望めなくなります。

僕が小学校の頃にやっていた習い事は、習字でした。ずっとやめたいと思っていたのに、親に「せっかく始めたのだから」と諭されて卒業まで6年間続けました。せっかく親に月謝を払ってもらっていたのに、学び方が悪かったのか、6年間続けてもたいして字はうまくなりませんでした。その時間を別の何かに使っていたら、もっと得るものがあったのではと思えてなりません。

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習い事も部活も、続けてやり遂げた時点で美談になりがちですが、果たしてそれでいいのでしょうか。時間は有限ですから、何かをやめない限り、新しいことには踏み出せません。現代には学びの機会は無数にあり、選択肢は山のようにあります。子どもが何かにチャレンジして「やめたい」と言ったら、次の何かにチャレンジする機会を与えてあげるのも、1つの方法だと思います。