韓国で起きた衝撃の性犯罪「n番部屋事件」の深すぎる「闇」

レイプ撮影、「奴隷」と肌に刻みつけ…
トイアンナ プロフィール

「女性蔑視」と「女性優遇」のパラドックス

この事件が起きた背景には、韓国で長らく続く「女性蔑視」と「女性優遇」のパラドックスがある。たとえば2019年には、大人気アイドルグループBIGBANG(ビッグバン)のメンバーが芸能界から引退。理由はわいせつなサービスのあっせん疑惑だった。

直近のベストセラー小説『82年生まれ、キム・ジヨン』は韓国人女性の未だ受ける差別を洗い出す。家族でご飯を食べられる順番は女の子どもが最後。女性の喫煙は"はしたない"こととして、後ろ指をさされる。姑へ「娘を産んでしまった」ことを謝罪する母親。"タクシーで最初の客に女は乗せない"とする風習。小さな差別が積もり積もって、韓国人女性を生きづらくする。

他方、韓国人男性からは「女性が優遇されている」との声が挙がる。もともと韓国では男性のみ2年の兵役を課されることから、恩恵として「軍務加算点制」を受けられた。軍務を終えた男性は、公務員採用試験などで特別に加点されるシステムだ。女性の反対で1999年に廃止されたが、これが「女性優遇」だと不満の声が続いていた。2011年には8割が軍務加算点制の再導入に賛成している。

 

私がヒアリングした韓国人女性も、n番部屋事件は「10年来の不満が爆発した事件だ」と語る。

「韓国ではフェミニストと名乗ることがカッコいい、女性差別をなくそう、という動きが10年以上ありました。ですが、男性がデートではエスコートすべき、稼ぐべきという価値観は残っています。

それに、兵役は男性だけ。何らかの理由で兵役に行けない男性はボロクソに叩かれます。そして、性暴力がひどかったのは40代以上の世代。いまの韓国人男性は男女平等を教えられています。それなのに"女ばかりが権利を得て許せない"と感じる人がいるのも理解できます」

「n番部屋事件」が単なる性欲の発露ではなく、ミソジニー(家父長制に従わない女性を嫌う立場)からの犯罪だとする見方は、韓国人の間にも多いという。韓国人女性は年配から差別されると同時に、同世代からは優遇をねたまれるパラドックスを背負っているのだ。