日本とは大違い…フランス大統領がコロナ対応で「国民に直接語った」ワケ

3530万人がテレビに釘付けに
髙崎 順子 プロフィール

「黄色ベスト運動」は自動車燃料の増税に端を発したものだが、富裕層優遇に繋がる策を打ち出すマクロン政権に対する、全国的な反政府デモに急拡大した。「マクロン退陣」の声が強く上がったが、大統領は政府としての対応を首相・閣僚に任せきりにして発言を控え、国民から怒涛の非難を浴びた。雇用問題での大失言もあり、大統領選で彼を支援した若者層からも失望を招いた。

大統領がようやくテレビ演説を行ったのは、運動開始から3週間後。デモ行進に過激派が混入し、国家的な治安問題となってしまってからだった。しかし時期を逸した感は否めず、余計に国民の怒りを煽る結果になった。世論調査(Ifop調べ)での支持率は23%まで落ち、その後も黄色ベスト運動は長期化。今年に入っても散発的ながら、運動自体は続いている。

黄色ベスト運動(2018年12月)〔PHOTO〕Gettyimages

大統領テレビ演説をめぐる「お国芸」

フランスでこのアロキューションの様式が確立したのは、家庭用テレビの普及に伴う1950年代から。当時の国家元首シャルル・ド・ゴール大統領は、国営テレビ放送を政治ツールとして大いに活用し、在任11年間に49回のテレビ演説を行った。中でも多かったのが、1962年終結のアルジェリア戦争関連だ。

フランス国立統計経済研究所INSEEによると、当時のフランス世帯のテレビ所有率は23.1%。映像メディアの発信がまだまだ少なかった時代、「大統領が話す」と予告された時間には、テレビを備えたカフェや家電店のウィンドウ前、ラジオ付き自家用車の持ち主の元へ人が集い、最高権力者の発言に耳を傾けたという。

そしてそんな国民の反応は、マスメディアが大進化を遂げた21世紀の今も、さほど変わっていない。

 

大統領テレビ演説の実施が一般に伝えられるのは、多くの場合は放送当日。国民は内容をあれこれ推測しながら、ソワソワと開始時間を待つ。定番は夜の20時だ。フランスの平均的な夕食時であり、20時45分からのテレビのゴールデンタイムを前に、ほとんどの局が報道番組を流している。通常の演説は10〜15分で終わるので、すぐに報道番組で解説に繋げられる利点もある。