日本とは大違い…フランス大統領がコロナ対応で「国民に直接語った」ワケ

3530万人がテレビに釘付けに
髙崎 順子 プロフィール

とはいえそれは憲法上の話であり、国民が「国政の代表者」として認知しているのは大統領の方である。歴代大統領の名前は覚えているが、首相となると記憶があやふや、という人は成人でも多い。首相と異なり、大統領は民意がそのまま反映された「私たちの代表者」であり、親近感も重要性も段違いに異なる。

5年に一度の大統領選は国家最大のイベントで、投票率は過去半世紀、ほぼ8割付近で推移している。マクロン大統領が選出された2017年の選挙では、第1回投票の投票率は77.77%、第2回投票が74.56%だったが、多くのメディアが「80%を切ってしまった!」とその数値に危機感を示した

大統領の存在がかくも重要だからこそ、国民への説明責任を果たすのは、大統領でなければならない。テレビ演説の注目度の高さは、大統領個人の資質や人望よりも、「大統領」という地位に起因している。マクロン氏は演説上手で知られるが、それは彼のアロキューションの高視聴率の、直接的な理由ではないのだ。

ちなみに国会議員と大統領が、それぞれ独立した選挙で選ばれる以上、両者間で政治信条の異なる政党が多数派になる「ねじれ」が生まれることもある。フランスではその状態は「同居(コアビタシオン)」と呼ばれ、当然、立法や施行の動きが鈍る。逆に国会と大統領の多数派が一致すると、大統領の権限は議会・内閣の後押しを得て、さらに強化される。現在のマクロン政権の状況がまさにそれである。

 

大統領テレビ演説の失敗例

3月16日の新型コロナウィルスに関する大統領テレビ演説とその後の政府対応は、大統領権限の強さと国会との多数派一致による施政の迅速さが、如実に現れたものだ。政治ツールとしてのアロキューションが、最も効果的に機能した例と言える。

しかしマクロン大統領も、過去にはその使い方を誤ったことがある。2018年11月中旬から翌年の年始にかけて、「黄色ベスト運動」デモが各地に波及したときだ。