日本とは大違い…フランス大統領がコロナ対応で「国民に直接語った」ワケ

3530万人がテレビに釘付けに
髙崎 順子 プロフィール

まずアロキューションは不定期で、国家の一大事にのみ行われる。国の姿勢を示し、国民の支持と団結を固める絶好の手段だが、それだけに安易に連発もできない。各省庁の大臣でも、内閣を統括する首相でもなく、外交・軍事を含めフランス全体を代表する「共和国大統領」が話さなければ意味がない「ここぞ」の場面だけに限られている。

記憶に新しいところでは、2015年11月13日のパリ同時多発テロ当日深夜に放送された、オランド大統領の国家非常事態宣言・国境封鎖が、象徴的な例と言えるだろう。

裏を返すと、国家を揺るがす一大事には、国民が大統領のテレビ演説を必ず期待する、ということでもある。平たく言うなら「責任者、出てこい」の感覚だ。沈黙する大統領は「だんまりか」と激しい批判にさらされ、無言でやり過ごすことは許されない。

そこで有効な対応策を示せない場合は、デモやストなどの市民側の実力行使を招き、事態の沈静化はさらに遠くなる。アロキューションは大統領にとって、求心力を高める伝家の宝刀であると同時に、回避不可能な説明責任を喉元に突きつける諸刃の剣でもあるのだ。 

 

国民が自ら選ぶ、国政の代表者

大統領のテレビ演説がここまでの影響力を持つ背景には、「半大統領制」というフランスの政治体制がある。フランスの立法府は日本と類似の二院制の議会で、行政府である内閣は国民議会(日本の衆議院に相当)の多数派与党から選出される。

一方、大統領はその国会議員選挙とは別立ての直接国民選挙で選出され、首相・閣僚の任命権、国会の解散権や国軍の総指揮権など強大な権力を持つ。国会を基盤とする内閣首相と、直接の民意を基盤とする大統領が、役割分担で施政する仕組みだ。