日本とは大違い…フランス大統領がコロナ対応で「国民に直接語った」ワケ

3530万人がテレビに釘付けに
髙崎 順子 プロフィール

この模様は地上波の公共・民営テレビ、ネットテレビ、ラジオで一斉・同時にオンエアされ、視聴者はテレビだけで3530万人にのぼり、86.6%の視聴率を叩き出した。その4日前の3月12日、マクロン大統領は全国一斉休校と可能な限りのリモートワークを同様のテレビ演説で通達し、多くの視聴者(2200万人)を得たが、この日はそれを悠々と上回り、過去最高の驚異的な数値を記録した。

ここからのフランスの変化もまた、驚くべきものだった。関連の大臣・省庁が、大統領発言に基づく対策を続々と公表。外出時に携帯する申請書類のダウンロードリンクや、補償金申請の専用サイトが、数時間で整えられていく。状況を軽視し外出を続ける国民にも対策を遵守させるため、戒厳令下のような厳重さで警察・軍が出動した。各種報道機関は演説内の項目を主要トピックとして解説や取材を行い、それは数日経った今も続いている。

こうしてフランスでは街の動きも国民の暮らしも、全てが一変した。大統領演説の前と後で、はっきりと。まさに「鶴の一声」の勢いで、国家の現状が拡散・共有され、それに基づく対策が具現化されていったのだ。

大統領だけに許された、諸刃の剣

このような大統領のテレビ演説は、フランス語で「Allocution アロキューション」と呼ばれる。国民に直接語りかけられる、大統領だけに許されている特別な機会だ。

舞台設定・内容・長さと、放送に関する全てが大統領と広報チームによりで決められる。そして必ずノーカット・フルバージョンで、主要地上波ならびにラジオで一斉放送される。

 

フランスの大統領には毎年12月31日の夜、類似の形式で新年祝賀テレビ演説を行う風習がある。しかしこのアロキューションは、それとは大きく性質を異にするものだ。