「助け合い精神」がパニックを加速させてしまう面も

勝手に買ってきてくれたとはいえ、母は善意と思い「ありがとう」とすべての料金を支払い、翌日お礼にお菓子を持って行ったという。しかし、テレビは毎日のように、マスクやトイレットペーパー不足を伝えている。「正直、一人暮らしには使い切れない量で、ニュースをみたら買えない人もたくさんいて、なんだか申し訳ない」と落ち込んでしまったというのだ。

実家は都心から車で2時間弱のエリアだが、困ったときには助け合う精神が残っている。高齢者同士連携して助け合うので安心できる面は大きい。しかし、いざ緊急事態になるとパニックも連携してしまう。しかも、助け合い精神の裏には面倒な人間関係も絡むため、“無下に断る”“自分の意見を言う”というのは難しいというのだ。

「もうたくさんあるから大丈夫って言ったら。あと、今買い占めが問題になっているから、たくさん買わないほうがいいよ、って柔らかく言ってみたら」と母に提案するが、やはり「わざわざ心配して買ってきてくれた人にそんなこと言えない」という。どうも、トイレットペーパーなどを持ってきてくれた近所の友人はその後も毎日のように、オープン前にスーパーに並び、さまざまな商品を買い占めていると話しているらしい。しかも彼女のように、自分のためではなく、近所の友人のため、子どものため、孫のため、誰かの助けになれば、と早朝に店頭に並ぶ高齢者はとても多いと言う。

結局母は、ひとりで使い切れない量のトイレットペーパーを持っているのは申し訳ないと、私や兄や知人に電話をし、必要な人にこっそりと分けていると打ち明けた。

多少流通してきたが、いまだに品切れの店舗も多い photo/getty images

親の世代の買い占めのループは実は日常的にある

ここまで読んで「こういう常識がない高齢者がいるから!」と怒る方もいるだろう。しかし、母たち高齢者世代の情報源は、テレビであり、ワイドショーが中心だ。

テレビで毎日のように買い占めの映像が映し出され、「大変なことになっている!」と心配になり近所のスーパーに行ってみる。すると、店頭では実際に品薄で、みんなが「マスクはどこ、トイレットペーパーはいつ入る?」と聞いていれば、心理的にも心配は募るのは当然だろう。心配になって近所の高齢者仲間に話を聞いても、「そうなんだよ、テレビでも言ってたけど、次はティッシュペーパーも買えなくなるらしい」と同じような買い占め情報しか入ってこない。「情報リテラシーを!」と言っても、母たち世代にきちんと伝わるように情報配信しない限りは、買い占めに走ってしまうのも、ある意味仕方ないのかもしれない。

さらに、高齢者は足腰も弱くなっている分、万が一動けなくなったとき、子どもたちに迷惑をかけてはいけないと、普段から買い置き、買い溜めが習慣化しているケースも多い。時間もあり早起きだから、早朝から「歩けるうちに、動けるうちに」と毎日のようにスーパーに通い、買い占めが習慣化してしまうのだ。