3月23日、日本製紙連合会の矢島進会長が記者会見をし、「トイレットペーパーやティッシュの品薄は1週間くらいで解消されるはずだ」と語った。これで市場は多少落ち着くのではないだろうか。そもそもマスクとは異なり、商品の製造が追いつかないというわけではなかった。在庫はあるにもかかわらず店頭で品切れになったその原因は、SNSで拡散したデマによる急激な「買い占め」にあるのだから。

しかし、自分はデマに振り回されて買い占めはしないと決意していても、実家に帰ったら山ほどのトイレットペーパーがある! なんてことはなかっただろうか。医療関係の記事を多く作成しているフリー編集者の安藤由美さんが、実例と共に背景を分析する。

買い占めたつもりはないのに、
実家はトイレットペーパーだらけ

先日、東京郊外に住む一人暮らしの母(76歳)からこんな電話がかかってきた。
「あなた、トイレットペーパーの在庫はあるの? なかったらうちにいっぱいあるから、取りにいらっしゃい」

いっぱい!? オイオイ!あれほど情報に踊らされるな、買い占めに走らないで、と何度も説明をしたのに……!と叱ろうと思ったら、どうも様子が違うらしい。母自身が購入したのではなく、近所の人や友達が「善意」で持ってきてくれたというのだ。

母は先月半ばに転んでちょっとした怪我をしていた。母は、「ところどころ痛いし、娘に買い占めるなとしつこく言われているし、物置に以前災害用にストックした備蓄もあるからまだ慌てることはない」と買い物を控え、勧告通り不要な外出も控えていた。しかし夕方、近所に住む友人(70代)が「怪我をして、買い物に行けないと思ったから」とトイレットペーパー12ロール入りを持ってきてくれたというのだ。

母は友人の思いやりに感激し、「これだけあれば一人暮らしだし、しばらくは持つわ」と安堵した。すると夜、同じ地域に住む親戚(70代)が「早朝大きなスーパーに行ったら、余計に買えたのよ」とトイレットペーパー6ロール入り2個を持ってきてくれたというのだ。「さっきいただいたので、大丈夫」と、のどまで出たが、心配してわざわざ持ってきてくれたものを無下にはできなかったという。

翌日、前日の友人が「息子が車出してくれて、大型モールに行ったの。お米も足りなくなるってみんな並んでたのよ。息子にあなたの分買ってもらっといたからね。あと、トイレレットペーパー、今日もあったから余分に買っておいたから。こんなご時世だから見つけたら買っておかなきゃね」と、5㎏のお米が2つに、トイレットペーパー12ロール入り2つを持ってきた。

入荷してもすぐに品切れになる状況は今も続いている photo/getty images