自国を愛するがゆえ?
心の知能指数が低すぎる

3人でお互いの話をし始めるとマニュエルはパリ育ち。割と裕福な家庭環境で育ち、成績優秀で大学院に進んだばかりだという。勉強も恋愛も挫折しらずといった自信に満ち溢れた雰囲気だ。

ヘミングウェイの家(博物館)。写真提供/歩りえこ

ヘミングウェイが好きで彼が住んだキーウェストを一目見たいと思い、大学院の休み中に旅行へ来たらしい。

マニュエルは店内を見渡すと、こう言った。「ねえ、アメリカ人って何でこんなに服がダサいの? 味覚も美的感覚も狂ってるの?」何のためらいもなく真っすぐな瞳でジョンに聞く。

いや、ほぼ移民で構成されているアメリカとはいえ、その質問を自国の人にぶつけるのは失礼過ぎじゃない……? ジョンはさっきまでとは違い、ちょっと強張った表情になっていた。そりゃそうだ。「日本食ってマズイ、日本人ってダサい」と他国の人に言われたらさすがにムッとするな……

「そんなにダサい……? フランス人はお洒落な人多いもんね……」マズい空気……。一応アメリカ人が同席していることを気にしてくれ!

そこに、100kg近くありそうなウェイトレスさんがテーブルの横を通った。「アメリカ人って何であんなになるまで太れるの? 何食べたらあんなに太る? 運動しないわけ? 気に入った服があっても着ることもできないじゃん。フランスではあんなデブいないよ。鏡を見ないのかな?

いや、もうそろそろええ加減にせえよ……。さっきから批判しかしてないじゃん! 折角アメリカに旅行に来ているのに悪いところばかりしか目につかないのかな? 確かに顔も彫刻のように綺麗で頭脳明晰かもしれない。でもさ、IQ高くてもEQ(心の知能指数)は低い! ちょっとはジョンの気持ちになってみなよ!

顔はおおらかそうなジョンだが、筋肉隆々で細身のマニュエルなんて一発でノックダウンできそうだ。アメリカ人に対して、今のところ否定ばかりのマニュエルにカチンと来たのか(?)「ちょっとお腹痛いから、俺今日観光やめとくわ……」と言った。

するとマニュエルは「え! そう? リエコは行ってくれるよね! 僕一人で観光するなんてつまらなくて絶対無理! 付き合ってよね!」と言い出した。

お、おう……。普通はその言葉の前にジョンの心配をするのが先だけどな! 自分のことしか考えてないのかな? 爽やかな朝が台無しの気分だ。ジョンは苦笑いをしながら朝食代をテーブルに置いてサッと行ってしまった。

賑やかなフロントストリート。写真提供/歩りえこ