水原希子さん出演でドラマ化された『ブラを捨て旅に出よう』の原案者であり、旅作家の歩りえこさんのFRaU web連載「世界94カ国で出会った男たち」(毎月2回更新)。

前回の記事では、東ティモール民主共和国で出会ったセクハラ男について綴っていただきましたが、今回は、アメリカ横断中に観光をともにした超自己中心的で自国愛強すぎのフランス人男性とのエピソードをお伝えします

歩さんの今までの連載はこちら▶︎

価値観の違い?国の違い?
観光前の朝食から暗雲が...

23歳で世界一周の旅を始めて、最初に訪れた国がアメリカだ。グレイハウンドバスという長距離バスの1カ月周遊し放題パスで3カ月をかけてアメリカ横断をしていた。

横断中にどうしても行きたかったのが名作『老人と海』などで知られる小説家・ヘミングウェイのかつての邸宅を公開している博物館があるフロリダ州キーウェストだ。

キーウエストのお洒落な街並み。写真提供/歩りえこ

長距離バスでキーウェストに到着して、ユースホステルのチェックイン前に荷物を預けて観光に出ようとした時だ。フロントに若くて少し中性的な雰囲気を持つ美形男性がいた。そして、もう一人ワイルド系で髭の濃い男性と私と3人、荷物を預けて観光へと繰り出そうとしている。

「ハロー!どこから来たの? 僕も一人旅だし、良かったらみんなで朝ごはん食べに行かない?」髭男からの声掛けで中性的男、私の3人で朝食に行くことになった。こじんまりとしたアメリカンスタイルのカフェでモーニングセットを頼む。

髭男はアメリカ人バックパッカーのジョン(仮名)25歳。そして、中性的男はフランス人大学院生のマニュエル(仮名)23歳だ

互いの自己紹介をしながら朝食を食べ始めると、オレンジジュースを飲んでいたマニュエルがブッとジュースを噴き出し、目の前に座っていた私に思い切りかかった……。

薄くてマズっ!! こんなの飲めないよ! フランスじゃこんなにマズイジュース絶対ありえないよ! 何で100%じゃないの?」果汁の薄いジュースに早口で怒りまくるマニュエル。

私に思い切りかかったジュースを隣に座っていたジョンがスッと差し出してくれたウェットティッシュで拭く……。一方のマニュエルは、拭くのを手伝う素振りすら見せない

「大丈夫⁉︎ ごめんね!」とか普通言わない? 別に自分で拭くけど、ちょっとは拭く素振りとかティッシュを差し出すとかいうアクションがあってもいいんじゃないの?(怒)マニュエルは全く気にせずパンを食べ出した。気づいてないのかな? それともわざと?

なんなんだ、このバゲットは! クッソマズイじゃないか!

え?そう?普通に美味しいけど……。アメリカに来て2カ月が経過している私は特別アメリカの食生活でカルチャーショックを感じたことはなかった。節約してるので高い店には行ってないが、まぁこんなもんだろうっていう許容範囲の味だ。

マニュエルはパンを一口食べただけでそれ以上食べるのを辞めた。「アメリカ人の味覚ってどうなってんの!? こんなマズイのを君たちよく食べられるね! これが普通? こんなにマズかったら僕、食べられるもの何にもないよ!

ジョンは自国の味覚を全否定されて多少びっくりしている表情だが、まぁイギリス人がイギリスの料理はマズイと言われて怒る人もそんなにいないし、アメリカにも美味しいレストランはたくさんあるわけで……それほどダメージを受けている様子でもないが、一応フォローしといたほうがいいだろうか。

この場でこの2人が喧嘩し出したら面倒だ。キーウェストの爽やかな朝に少し暗雲が立ち込めてきている

ジューススタントで語らうキーウエストの人々。写真提供/歩りえこ