「新型コロナワクチン」中国人民解放軍が世界に先駆けて開発した背景

舞台はやはり「疑惑の研究所」だった…
近藤 大介 プロフィール

武漢病毒研究所の疑惑再び

私は陳薇少将の功績を称える中国の報道にくまなく目を通したが、これほど高度かつ緊急を要する「出張研究」を、どこで行ったのかについては、一切出ていなかった。中国はこの「国家的事業」をアピールしたいはずなのに、実に不思議なことだ。

彼女のチームは、中国科学院武漢病毒研究所に入って、というより、この実験施設を「乗っ取る」格好で入り込み、共同開発したものと思われる。なぜなら、2月4日に武漢病毒研究所が、「わが国の学者が2019年新型コロナウイルスの薬物選別の分野で重要な進展を得た」というタイトルの文書を発表しているからだ。その文書の中には、次のように記されている。

〈 最近、中国科学院武漢病毒研究所生物安全大科学研究中心と軍事科学院軍事医学研究院国家応急防止薬物工程技術研究中心は、総合的な研究を行い、2019年新型コロナウイルスの薬物を選別する分野で重要な進展を得た 〉

それではなぜ先週、中国官製メディアは陳薇少将ばかりをクローズアップしたのか。それはやはり、武漢病毒研究所が「疑惑の研究所」だからだろう。

武漢病毒研究所の疑惑については先月、本コラムで詳述した通りである。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70495

私が指摘したのは、中国が世界に誇るウイルス研究の最高権威である武漢病毒研究所から、ウイルスが漏れたのではないかということだ。可能性として一番考えられるのは、研究所内の何者かが、実験済みの動物を、約18㎞しか離れていない華南海鮮市場に横流しし、そこが感染源となって世界に拡散していったということだ。同様のことを中国農業大学が行っていて、今年1月に厳しく罰せられた「前例」がある。

だが、もしこの「仮説」が事実だとしても、中国としては口が裂けても言えない。なぜならそう認めたとたん、世界中から非難を浴び、かつ賠償請求が殺到するからだ。

特に、米ドナルド・トランプ政権から叩かれることを、中国は警戒している。だから孫氏の兵法に「攻撃は最大の防御なり」とあるように、3月12日、中国外交部の趙立堅報道官が、「おそらくアメリカ軍が武漢にウイルスを持ち込んだのだ」とツイッターでつぶやいたのだ。

3月18日には、中国政府のコロナウイルス対策専門家チームのチーム長を務める鍾南山院士も、「ウイルスの発生源が中国だという証拠はない」と、広州での会見で開き直っている。

 

これはある日本の専門家から聞いた話だが、ウイルスの研究を行っている機関は、必ず同時にワクチンの研究も行っているという。そのため、武漢病毒研究所でワクチンを開発する前に、ウイルスが漏れてしまったということなのではないのか。だから陳薇少将のチームが武漢病毒研究所に乗り込み、この研究所が行っていたワクチン研究を引き継いだ。

もともと、国家の病毒研究というものは、生物化学兵器の研究と密接に関連している。そのため、武漢病毒研究所が軍事医学研究院と共同開発するのは、当然のことと言える。