「新型コロナワクチン」中国人民解放軍が世界に先駆けて開発した背景

舞台はやはり「疑惑の研究所」だった…

CCTVの「スクープニュース」

先週3月18日昼、中国中央電視台(CCTV)の「チャンネル7」(国防軍事チャンネル)が、1分53秒にわたって「スクープニュース」を報道した。世界に先駆けて、中国が新型コロナウイルスのワクチンを開発したという内容だ。

中国で新型コロナウイルス関連のニュースは、普通なら「チャンネル1」(総合チャンネル)で放映するはずなのだが、今回は「チャンネル7」だった。その理由は、ワクチンの開発者が、人民解放軍の陳薇(チェン・ウェイ)少将(54歳、中国工程院院士、中国軍事科学院軍事医学研究院研究員)だったからである。報道内容は、以下の通りだ。

〈 (軍服姿の女性キャスター)皆が期待している新型コロナウイルスのワクチンの開発に、ついに成功しました。本日、武漢から驚くようなニュースが入って来ました。陳薇院士をトップとする中国軍事科学院医科学研究院のチームは、50日にわたる奮闘の結果、新型コロナウイルスのワクチンの抽出に成功しました。3月16日の20時18分、正式にワクチンの臨床実験が始動したのです。

(現場の実況レポート)こちら新型コロナウイルス肺炎防止指揮部の現場です。16日午後2時から、中国軍事科学院医科学研究院の陳薇院士とトップとする研究グループは、2時間余りにわたる口頭試問を受け、ついに新型コロナウイルスのワクチンの臨床試験の許可を得ました。

(ナレーション) 陳薇院士の研究グループは、1月26日に武漢入りして以来、地方の優秀な企業と共に、エボラウイルスのワクチンを開発した際の経験に基づき、一分一秒を争って、新型コロナウイルスの病毒ワクチンの薬学、薬効学、薬理毒理などの研究を行ってきました。第三者による安全チェックにも合格しました。

中央電視台の「スクープニュース」でインタビューに答える陳薇少将

(陳薇少将)われわれは国際的な規範と国内的な法規に基づき、安全で効果的、抑制可能で大量生産できるワクチンを開発しました。われわれはすでに、いつでも臨床実験の戦闘態勢に入れるあらゆる準備が整っています。

(ナレーション)昨晩、陳薇院士の研究グループは、ワクチンの臨床実験の許可を与えられました。

(陳薇少将)われわれは現在、地球村という人類運命共同体の時代に生きています。ワクチンは、新型コロナウイルスとの戦いを終結させるのに、最も有力な科学技術の武器です。

今回のこの武器を、もしも中国が率先して研究、製造できれば、中国が自国の知的所有権を持つことになります。中国が自主的に研究、製造したものだからです。このことは中国の科学技術の進歩を体現するばかりか、われわれの大国としての形を表すことにもなると思います 〉

陳薇少将は、中国で最も有名な女性軍人と言える。それは、2017年に中国映画の入場者数(1.4億人)と興行収入(56.8億元≒888億円)の新記録を打ち立てた『戦狼2』の陳博士のモデルとなった女性兵士だからだ。

 

この映画は、中国版『ランボー』とも言える内容で、私は2017年秋の日中映画ウイークの上映で観た。日比谷の映画館だったが、観客の多くは日本在住の中国人で、主人公兼監督の呉京(ウー・ジン)が派手なアクションで敵を倒すたびに、中国語の歓声が上がっていた。ラストシーンで勝利した呉京が五星紅旗(中国国旗)を立てるシーンでは、拍手喝采である。

この映画は、アフリカに渡った中国人ボディガード(呉京)が、親中国のアフリカ某国の政府を転覆させようとするヨーロッパ某国の反乱軍に徒手空拳で立ち向かうというストーリーだ。だが映画を観る限り、この「悪のヨーロッパ某国」は、明らかにアメリカを想定している。

正義の中国が悪のアメリカを叩き潰すという勧善懲悪のストーリーになっているからこそ、14億中国人が熱狂したのだ。加えて、習近平政権は、「強国建設」のスローガンと合致していることから、この映画を間接的に支援した。

そして映画の中で、アフリカをエボラ出血熱から救った陳博士は、反乱軍に誘拐されて殺されてしまうという設定なのである。

中国最大のヒット作となった『戦狼2』の「エボラ熱の救世主」陳博士
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