同居第一日目の「事件」

家に来て初めての夕食を和やかに終え、食後のお茶をみんなで飲み、テレビを見ながらの一家団欒。娘が大好きな「登志子さん」を迎えて、なんだか理想的な3世代同居ではないか。母がいくらわけのわからないことをやっても、少しの手助けで普通に暮らしていけるような気がしていた。

夜も更け、お風呂の時間である。慣れない環境で疲れているはずの母を一番風呂に入れることにした。階段をゆっくり降りさせて、風呂に案内し、使い方を教えて2階に上がった。風呂には呼び出しの機能があるので、何かあったら呼ぶように伝えた。

母は、さっぱりした様子で2階に上がってきた。硬い表情がゆるんで、気持ちが良さそうである。それだけでも家に呼んだ意味があるというものだ。浴槽のふたはさすがに閉められなかっただろうと、風呂場に降りていったとき、信じられないものが目に飛び込んできた。

薄氷? 御神渡りですか?

風呂の湯が一面、白くひび割れた膜で覆われている。それがすべて母の「垢」であると気づくまで、私は風呂場でフリーズしていた。母も伯母も、結局銭湯には行っていなかったのだ。

この状態から、湯の表面がすべて白い「膜」で覆われていた…Photo by iStock

これはまずい。次に入りたいと言っていたのは義母である。潔癖症の義母がこんな湯に浸かるわけがない。私たちだって浸かりたくない。もったいないし、水道代も馬鹿にならないが、湯を全部抜いて沸かし直すことにした。義母が入りに来る前でよかった。これを見ていたら、母は即座に追い出されてしまっただろう。ただ、今後は毎日風呂に入ることができるので、こんな事件は二度と起きないはずだ。事の顛末は夫と娘にだけ伝え、私は何食わぬ顔で義母の部屋に行った。

「お風呂、空きましたよ」

次回は4月7日(火)公開予定です

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