エリート軍人は「ケアする人」

セリは、シャンプー、リンス、ボディソープ、アロマキャンドルなど、北朝鮮の村にはない、様々な日用品を欲しがる。面倒な顔をせず市場の裏取引で入手してくるジョンヒョクは、服装や軍人という職業が醸し出すマッチョな印象とは裏腹に「ケアする人」だ。

『愛の不時着』より

つまり、リ・ジョンヒョクは、これまで女性たちが愛という名の下に、家族のためにしてきた「無償ケア労働」を、セリのために黙々とこなす。彼女を北朝鮮当局に通報しなかった理由を、彼は「ケガをするかもしれないし、消されるかもしれない。安全を保障できなくて心配だったから」と説明する。彼はセリを心配(ケア)し、保護し、食事や着る物など生活に必要な面倒を見る(ケア)

ちなみにジョンヒョクはセリだけでなく、自分の部下たちのことも常にケアしている。ある場所から走って逃げる隊員が靴を忘れた時は、あとから追いかけて行って靴を履かせてやった。親元から離れて10年近く兵役に就く少年隊員を含め、部下たちを家族のように思いやり、食べ物を分けてやる。危機に際していわゆる「男らしさ」に基づく強さを発揮し大切な人を守るだけでなく、日常生活の中で相手を思いやるところが魅力だ。

このドラマのヒーローは敵を倒すだけでなく、固定的な性別役割分担をひっくり返してみせてくれる。それはヒロインも同様だ。