新型コロナが欧米社会を破壊…「日本モデル」は成功するのか

自由主義社会の真価が問われている
篠田 英朗 プロフィール

欧米諸国は、緊急事態を宣言し、外出禁止令や国民の全面的な海外渡航の禁止などの急進的な政策を導入した。

商業施設や工場も閉鎖状態だ。株価も乱高下している。失業者があふれかえり始めている。平時では想像できない莫大な経済的損失が出始めている。

アメリカは1兆ドル規模の経済対策を導入し、イギリスは労働者給与の8割を補填するというが、危機からの脱出のタイミングは不透明なままだ。

文明の危機と言ってもいい深刻な事態が、訪れた。これで遂に中国が世界の覇権国になり、アメリカもヨーロッパも没落していくのではないか。そのような不安を、すでに何人かの識者が表明し始めている。

「第二次世界大戦以来の危機」「戦時体制」といった言葉が違和感なく使われている。コロナ危機は、自由主義諸国の優位を前提にした世界が変化する危機を感じさせているのである。

 

日本モデルとは何か

この状況の中で、アジア諸国は健闘している。韓国が有名にした「ドライブスルー検査」はアメリカでも模倣的に導入されている。台湾や、東南アジア諸国も、比較的よく感染拡大を抑えている。中国やロシアだけが成功しているわけではないことは、自由主義世界にとっては、朗報である。

興味深いのが、日本の事例だ。他国に先立ってウイルスが入り込んで感染者が拡大する兆しが見られた。しかし意外にも、爆発的な拡大は見られていない。

日本では法的権限を行使した強権的措置はなく、新しい技術の導入もないので、持ちこたえている理由については専門家の間でも明確な理解がないようだ。日本人自身が自分たちの取り組みについて意識的な説明をしないため、日本の善戦は、世界にもあまり伝わっていない。

日本の事例は、中国のような「権威主義」型の対応でも、欧米諸国のような「緊急事態」型の対応でもないように見える。それはいわば「努力要請」型の対応だ。だからわかりにくい。

この「日本モデル」がいったい何なのか、もう少し日本人自身が自覚的に考え、自分たちで語ってみることが、必要ではないだろうか。