日本が韓国の「新型コロナ対策」を参考にできない政治的事情

中国とは連携できても、韓国とは…?
牧野 愛博 プロフィール

文在寅政権がPCR検査を拡大する理由

一方、韓国側関係者に話を聞くと、こちらはこちらで「裏切られた」という思いが強いのだという。

文在寅大統領は3月1日、日本による朝鮮半島支配からの独立運動を記念する演説で、「日本は常に最も近い隣国だ」と指摘。新型コロナウイルス問題を念頭に、「共に危機を克服し、未来志向の協力関係に向けて努力しよう」と呼びかけていた。韓国政府関係者は「昨年8月15日の光復節演説と同じパターンだ。あのときも韓国は日本に対話のメッセージを送ったのに、日本は韓国向けの輸出規制をそのまま続けた」と語る。

日韓の信頼関係が破壊されているため、新型コロナウイルス問題でも深い意見交換ができていない。

すでに広く知られているように、韓国では2015年に起きた中東呼吸器症候群(MERS)の教訓もあり、感染の有無を調べるPCR検査をできる限り幅広く実施している。検査の実績は30万件を超え、日本の検査実績の約18倍に達する。

これは国民から「MERSの感染拡大を防げなかったのは、政府の対策不徹底が原因だ」とする批判を浴びた教訓が背景にある。2014年には旅客船セウォル号の沈没事故が起きたが、このときも当時の朴槿恵政権の危機管理が不十分だったとされた。

 

文在寅政権は、こうした政治的な批判を避けるためにも、情報公開を可能な限り進める方針を採っている。実際、文在寅政権は、中国に対する入国規制の不徹底やマスクの供給不足について批判を浴びているものの、PCR検査の幅広い実施はおおむね世論の支持を得ている。