日本が韓国の「新型コロナ対策」を参考にできない政治的事情

中国とは連携できても、韓国とは…?
牧野 愛博 プロフィール

その過程で、日本側は中韓両国からの入国規制措置の内容についてもある程度、事前に中国側に伝えることができたという。これが、中国の入国規制措置を巡る「理解する」というコメントにつながった。

現時点での日中の信頼関係は、習近平主席の訪日を成功させたいという日中双方の政治的思惑から来ており、一時的なものなのかもしれない。それでも、政治的な努力で交流を増やすことができれば、双方の利益になるというお手本を示したとも言える。

韓国との対話は「最小限にしたい」

一方、日韓関係のほうは散々だった。韓国メディアによれば、韓国外交省は3月15日、日本の入国規制措置を巡る外交当局間の接触過程を明らかにする異例の措置を取り、「事前通報や事前協議は無かった」と改めて強調した。

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日韓当局の外交協議の内幕については、「韓国からの入国規制、安倍政権の拙速が招いた『怒りと混乱』全内幕」で明らかにしたとおりだが、要は「通報を巡る解釈の違い」(日本政府関係者)だったようだ。

上述したように、入国規制措置を巡る関係省庁会議の調整が終わったのは、3月5日の安倍首相による方針表明の直前だった。このため、日本外務省は度重なる韓国からの問い合わせに対して「何も決まっていない」としか答えられなかった。

会議終了後、日本政府は外交チャンネルで韓国側に「これから方針表明がある」と急ぎ伝えたものの、具体的な内容にまでは踏み込まなかった。あまりに時間が足りなかったため、韓国外交省が大統領府に報告する時間も十分なかったとみられる。

 

また、日中両国のように緊密に調整する必要性にも迫られていなかった。与党関係者は「文在寅政権には慰安婦や旭日旗、レーダー照射、徴用工などで散々大変な目に遭わされてきた。できることなら、対話は最小限にしたいという首相官邸の考えも無理はない」と語る。官邸が慎重な姿勢を取っているため、日本政府関係者らは韓国側に突っ込んだ情報提供がしにくい状況に陥っている。