日本が韓国の「新型コロナ対策」を参考にできない政治的事情

中国とは連携できても、韓国とは…?
牧野 愛博 プロフィール

入国規制の検討がしやすくなった契機

こうしたなか、中国外交の指揮を執る楊潔篪(よう・けつち)共産党政治局員が2月28から29日にかけて訪日し、北村滋国家安全保障局長らと会談した。

楊氏はこの会談で習近平氏の訪日延期を申し入れなかったが、延期になった場合の日本側の対応について質問するなど、「限りなく延期を匂わせた」(日本政府関係者)という。この時から、日本政府内では「習近平訪日延期やむなし」の空気が急速に広がった。

同時にこの頃、日本国内では新型コロナ感染者の数が増え始めていた。安倍首相は2月27日に全国の小中高校などに休校を要請する方針を明らかにするなど、強硬姿勢が目立ち始めていた。また、自民党内の一部には従来から、習近平訪日中止や中国からの入国規制を強く求める声が上がっていた。楊潔篪氏の訪日を契機に、安倍政権が中国からの入国規制を検討しやすい環境が生まれた。

複数の関係者によれば、首相官邸が厚生労働省や外務省などに、中国と韓国からの入国規制について検討するよう指示したのは3月4日だった。そして、翌5日、中国から正式に外務省に「習近平主席の訪日を延期する」という連絡が入った。日中両政府は連絡を取り合い、同日午後4時に「訪日延期」を同時発表した。

このころ、関係省庁による中韓両国からの入国規制措置を巡る検討も続いていた。関係省庁会議が終わり、安倍首相が入国規制方針を明らかにしたのが午後7時ごろだった。

 

関係者は「習主席訪日延期」の発表と「中韓からの入国規制」の方針表明の順番が逆にならないよう神経を遣ったという。入国規制方針の発表が先になれば、日本が規制したことで習近平氏の訪日を妨げたという誤解が生じかねなかったためだ。このため、日中両当局は頻繁に連絡を取り合った。