そもそもなぜ中国・武漢は「新型コロナの発生地」になったのか?

自然から人類への警告の可能性

なぜ「中国内陸部」なのか?

新型コロナウイルスの「発生源」について、ついに中国とアメリカの間で舌戦が始まりました。トランプ大統領が「チャイニーズ・ウイルス」と発言したり、アメリカ政府高官が「武漢が発生地であることを忘れるな」などと次々に述べる一方、中国政府の報道官は「米軍が中国へ持ち込んだのだ」と主張し、物議を醸しています。

3月中旬の武漢(Photo by gettyimages)

2002〜2003年に感染が拡大したSARSと同様、新型コロナウイルスについても、野生のコウモリが発生源(ウイルスの一次宿主)である、という説があります。その是非はひとまず置いておいて、先日こんな要旨の記事を目にしました。

〈SARS流行の時、ウイルスの宿主とされるキクガシラコウモリを調べるために、中国の専門家集団は雲南省の奥地へ調査に向かった。なぜ、わざわざそんなところに調べに行く必要があるのか。キクガシラコウモリだったら、広州の街中にもいるのに、見当違いの無駄な努力をしている。中国のやることは理解できない〉

でも、この中国の専門家集団が取った行動は正しかったのかもしれない、と筆者は考えています。その根拠を説明すると――。

現在、都市に住んでいるキクガシラコウモリは、おそらく人間の生活領域の拡大に伴って分布を広げた集団です。しかし、キクガシラコウモリという種は、人間社会が営まれるはるか前から存在しています。そしてそれは、現在私たちが身近に接することのできる集団とは、「生物学上の種」としては同一であっても、異なる存在です。つまり、都会に棲息する個体を調べても、彼らのことを深く調べることはできない可能性が高いということです。

 

では、本来の性質を保持したキクガシラコウモリの集団は、どこにいるのか? それは、中国の奥地です。そこは、地球上でも稀有な生物多様性を持つ地域なのです。

具体的にいえば、武漢を含む長江の流域とその周辺部。長江は中国最大の河川であるだけでなく、世界でも、アフリカのナイル、北米のミシシッピ、南米のアマゾンと並ぶ大河です。地史的な面での複雑さや、生物地理上の多様性においては、他の河川を上回るスケールを持っています。