「下駄をならして奴がくる〜♩」かまやつひろし『我が良き友よ』秘話

Char×泉谷しげる×亀渕昭信
週刊現代 プロフィール

亀渕 かまやつさんがあの時期にフォークの世界に行ったことは理解できます。彼はとても勘がいい人だから、「今の時代はフォークだ」と感じたんでしょう。しかもそれはビジネスではなく、純粋に新しさに惹かれた。

拓郎さんもすごいよね。曲を作る時、歌う人のイメージを膨らませるケースと、イメージを壊したいケースがある。この曲は、後者なのではないでしょうか。こんな曲を歌わせるのか、という意外性がヒットを生んだんじゃないかな。

泉谷 あとは意外に語られることが少ないけど、かまやつさんの声も魅力的なんだ。独特の、軽く鼻にかかった歌い方。けっして力まない。

ロックは叫んでガンガンやるのが普通なのに、彼は力が入っていない。でも、ちゃんと声が出ている。まさに唯一無二と言っていい。

 

亀渕 うん。それにフォークはギター一本で歌えるという意味でカントリーと類似点がある。特に『我が良き友よ』はバックにバンジョーが有効に使われていて、カントリー色がある。そこも彼にマッチしていたんです。

Char 俺は、ギターを持つと精神年齢が15歳に戻るんです。この曲を歌うとき、かまやつさんも同じ気持ちだったんじゃないかな。カントリーに夢中になったティーンに戻る感覚になるからか、目が輝いていた。

泉谷 カントリーにしかできない声の裏返し方があるんだけど、かまやつさんは上手かった。これは下手するとダサくなるんだけど、自然だからいいんだ。

亀渕 サビの「アー夢よ」の「アー」の部分なんて、まさにそうだよね。拓郎さんのフォーク的な部分と、かまやつさんが持つカントリーの部分が上手くはまった。彼がジャンルの幅を広げていったからこそ、この名曲は生まれたんです。

Photo by iStock

Char まだまだ自分は成長したいし、もっと新しい音楽を見たいし、クリエイトしたい、と死ぬまで思い続けていた。若者に任せるのではなく、自分もその場にいたい。その姿勢はぜひ、これからも受け継いでいきたいですね。

亀渕 かまやつさんの曲に『どうにかなるさ』('70年)というのがあるんですが、彼の生き方そのままなのではないでしょうか。

彼は、『我が良き友よ』が大ヒットした後も、フォークソングにこだわらなかった。自主独立路線で、飄々としていましたね。誰にも縛られず、好きな音楽だけを追求していく姿は、この曲に出てくる男のような「バンカラ」そのものでした。

Char(ちゃー)
55年、東京都生まれ。ギタリスト。『気絶するほど悩ましい』などのヒット曲を生み出す。4月25日には日比谷野外大音楽堂で単独公演を予定している
泉谷しげる(いずみや・しげる)
48年、青森県生まれ。シンガーソングライター。'71年にアルバム『泉谷しげる登場』でフォークシンガーとしてデビュー。俳優としても活躍
亀渕昭信(かめぶち・あきのぶ)
42年、北海道生まれ。元ニッポン放送取締役社長。'69~'73年には「オールナイトニッポン」のDJを務め、音楽の博識ぶりで人気を獲得した

「週刊現代」2020年3月7号より