「下駄をならして奴がくる〜♩」かまやつひろし『我が良き友よ』秘話

Char×泉谷しげる×亀渕昭信
週刊現代 プロフィール

「あいつ、どうしてるかな」

泉谷 彼のお父さんはティーブ釜萢という有名なジャズギタリストでした。子供の頃から、ジャズやカントリーなど最先端の音楽を聴いて育っている。文化資本が並外れていました。

亀渕 かまやつさんが10代を過ごした'50年代、カントリーは洒落た音楽だったからね。

Char とにかくいろんなジャンルに造詣が深かった。そのせいか、演奏するときは常にアレンジを加えるんですよ。

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泉谷 彼のセンスは、『我が良き友よ』のB面にある自作の曲『ゴロワーズを吸ったことがあるかい』を聴けば一瞬でわかるよ。初めて聴いたとき、激しいリズムとともに語るような歌い方をしていて衝撃を受けた。いまでいうラップなんだよね。時代を先取りしすぎていた。

亀渕 当時、あの曲を評価する人はいなかったね。何がしたいのか、一般の人には理解されなかった。

Char あの頃は音楽を演奏しながら詩人が詩を朗読する前衛芸術が流行っていました。それを取り込んでいたんじゃないかな。

でも、バックで演奏していたのがアメリカの重鎮バンド「タワー・オブ・パワー」だからすごいよね。偶然来日していて、依頼してみたら受けてくれたらしい。

 

泉谷 彼自身、『ゴロワーズ』はお気に入りで晩年もライブで演奏していたな。やっぱりアレンジを加えていて、パンク風にしたりジャズ風にしたりする。常に時代の流行サウンドを取り入れていた。

亀渕 『我が良き友よ』にもいろんなアレンジをしていたけど、曲そのものが良いのはもちろんです。発売当時は新幹線で東京―博多間が繋がるなど、時代は洗練されたものをもてはやす方向に進んでいました。

そんな慌ただしい時代の中で、この曲は「あいつ、どうしてるかな」と誰もが共有するような感覚を思い出させてくれたんです。