男の生家に行くZARD

まず、僕が人生で初めて聴いた不倫ソングであるZARDの「もう少し あと少し…」
《いけない恋》《出逢う時が遅すぎた》といった歌詞からもそれが不倫の歌だということは一目瞭然だが、女が男の生まれた家を見てきたという描写が唐突に2番の歌詞で出てくる点が、この曲に緊張感を持たせている。

「もう少し あともう少し…」を収録しているアルバム「ZARD Forever Best〜25th Anniversary〜」

しかも、その後には《あなたのこと困らせたい》と歌っているのだ。ここで描かれる女は黙って待つ気もなければ、日陰の女というポジションに甘んじるつもりもない。もちろん、不倫に悩み苦しむ描写もあるのだが、その女性像は先述した歌の中で描かれるものとは真逆である。

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男の自宅に出向く杏里

そんな男の生家に女が行くZARDに対し、男が妻と暮らす自宅にまで女が出向く光景を描いているのが、杏里の「愛してるなんてとても言えない」だ。

「愛してるなんてとても言えない」を収録しているアルバム「BOOGIE WOOGIE MAINLAND」

夜更けのどしゃぶりの中で女が男を待つシーンから始まり、2番の歌詞ではそのまま男の家まで行き外で待機するという一触即発の状態にまでなる。結局、《扉を叩く勇気のかけら 激しい雨に捨てよう》と歌っており修羅場は回避されるのだが、黙って待つ女でいようと思っていたのに、待ちきれず行動に移してしまった主人公の姿はとても人間臭い。

妻に会いに行く今井美樹

そして自宅訪問を通り越し、女が男の妻に会いに行ってしまうのが今井美樹の「半袖」だ。

「半袖」を収録しているアルバム「Ivory & IvoryII」

《その人を見た》という女の独白から始まる歌詞。ずっと読んでいくと“その人”というのが、不倫相手の妻だということが分かってくる。そう、女は男が家にいない昼間の時間を狙って自宅まで行き、子供と遊んでいる妻をじっと陰から見ているのだ。そこで突き付けられるのは、その幸せな光景に自分が決して入り込む隙はないという事実。

最後に、《愛し続ける勇気を私はそれでも捨てない》という歌詞で歌は幕を下ろす。
一見すると待つ女というポジションでありながら、都合のいい自己犠牲では終わらないこの曲を世の不倫男が聴いたら、果たして何を思うだろう。