「愛人」:わたしは待つ身の女でいいの

まずテレサ・テンの「愛人」だが、この直球タイトルと、《わたしは待つ身の女でいいの》というフレーズが全てを物語っている。《尽くして泣きぬれて》というサビの歌詞にもそれは表れているが、女が男のために自己犠牲をいとわないという描写が延々と続くのだ。

相手の男性に関する描写が歌詞の中に一切ないこともあり、どうしてそこまで“日陰の女”になりたがるのかと首をかしげてしまう。まぁ相手の男からしたら、文句も言わず責めもせず、ただ待ち続けている女は非常に都合がいいとは思うが。

〔PHOTO〕iStock
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「Ti Amo」:優しい人ね あなたは

次に、EXILEが女性視点で歌う「Ti Amo」。
この曲は不倫を連想させるフレーズがそこら中に散りばめられており、そのいずれもが「愛人」と同様に“日陰の女”というイメージに満ちている。

《好きになってはいけない》《終止符くらいは私に打たせて》《優しい人ね あなたは》《嘘を見抜きたくない》など、一つひとつは悲恋ソングにふさわしい切ない言葉であっても、これらを全てつないだ先に見えるのは、ひたすら男にとって都合のいい女だ。

好きになった罪を自戒し、優しい男のために何も気づかないフリをして自分から身を引く……そんな女性像を男性作詞家が描いて人気男性歌手に歌わせる構図を、少々グロテスクに感じるのは僕だけだろうか。