僕は小学生の頃から、悲しい恋の歌ばかりを好んで聴いてきた。恋愛経験なんてまるでなかった少年時代の僕でも、それが報われない恋の歌だとすぐ分かるような曲を。

中でも僕の心をとらえたのは「不倫ソング」だ。

と言っても、僕が育った家庭は父の不倫によって崩壊しているので、決してそれ自体に魅力を感じていたわけではない。ただ、不倫という恋の苦しさと、ゲイという自分のセクシャリティによって背負っていた寂しさを重ねていたのだと思う。

不倫ソングは、既婚男性と独身女性という組み合わせが多い。久保田利伸の「Missing」や小林明子の「恋におちて」といった、恐らく女性側が既婚者だと思われる名曲もあるが、それでも既婚男性×独身女性が多数派である。

とりわけ僕がハマったのは、好きになってはいけない相手を好きになり苦しんでいく女性目線の歌の数々。当時よく聴いていたZARD、今井美樹、杏里、竹内まりやといった女性歌手たちがたまに歌う不倫ソングを見つけるたび、同級生の男子に憧れてしまった自分の想いを重ねては胸を焦がしていた。

テレサ・テンの「愛人」に感じた寒々しさ

そんな風にして僕は女性歌手が歌う不倫ソング――正確には女性が作詞した不倫ソング――を聴いていたのだが、不倫ソングの代名詞でもあるテレサ・テンの「愛人」を初めて聴いた時、妙な寒々しさを感じたのを覚えている。

80年代中盤生まれでJポップ世代の僕にとって、テレサ・テンのような歌謡曲は古くさく感じられるんだろうと思い、当時はそれ以上深く考えなかった。しかし、やがてEXILE三代目J SOUL BROTHERSといった、今をときめく男性ポップアーティストが出す不倫ソングも聴くようになると、彼らの曲に対しても同じ寒気を抱いたのだ。

それは、なぜか。僕が聴いたテレサ・テン、EXILE、そして三代目J SOUL BROTHERSの不倫ソングにはいくつかの共通点があった。いずれも作詞家が男性であること。そしていずれも、「女が黙って男を許す」という内容が描かれていたのだ。

では、それぞれの曲を見ていこう。