やり過ごすのではなくチャンスにしたい

このコロナによる休校期間。一般的な感覚で言えば、子どもにかかわる多くの大人は「何とかやり過ごさせなければ」と焦りにも似た感覚だろう。だが、蓑手さんたちは、見事にピンチをチャンスに変えている

取材した3月18日時点で、前原小学校のリモートラーニングは2週間を経過。5年生84名中、参加しているのは30数名と学年全員の4割ほどになる。毎日多少の入れ替わりがあり、平均参加人数は20数名ほどだ。

強制してやっているわけでないのに、これだけ一定の人数が集まってくる。手応えを感じています」と蓑手さんは顔をほころばせる。

誤解を恐れずに言えば、春休み直前のこの時期だったことは不幸中の幸いと言えるかもしれない。
「カリキュラムは、ほぼほぼ終わっている。どこの学校もやっていたのは復習だけです。とにかく、子どもたちは忙しすぎる。休校の機会に、好きなこと、やりたいことを追求してほしいし、自分の学びを取り戻してもらいたい」と蓑手さんは願う。

「同一」に縛られていたら進めない

この先進的な取り組みを支えているのが、校長の檀原延和さんだ。小中学生にひとり1台のセルラータブレットを配布するICT教育の推進地、渋谷区の小学校から転任した。公立学校で何か新しいことを始めるには、「みんなが参加できないものはやらない」と横並びになりがちだ。そこを打破してくれた。

「臨時休校をきっかけに、小金井市や文科省でも、ネット環境を利用した学習を推奨しています。5年生は、以前から日常的にパソコンを利用していたので、自然な流れでした。子どもたちの中にはパソコンを利用した学習を積極的にやりたい子もいれば、ペーパーを使った学習をやりたい子もいます。みんな同一にはでないと始められないと躊躇していたら何もできません」と檀原さんは言う。

また、保護者には、全校メールで休校中にWEB学習を推奨することを説明し、「パソコン機器やネット環境等でお困りのことがあればご相談ください」と呼び掛けている。
考え方はいろいろだ。わが子にどう過ごさせるかの選択はあくまで保護者に任せ、多様性を認めている

さて。
その日の朝の会はひとまず終わった。ただし、テレビ電話は蓑手先生が学校にいる間はずっとつなぎっぱなしだ。

「では、みなさん、今日も良い一日を!」
手を振った後、言い残した。

「みんなで、社会をゴリゴリ変えていこう!」

おう!
はーい。
わかった~。
一間置いて、可愛い返事が教室に響き渡った。

「集まらないと授業はできない」のでなく、「集まらないからこその授業をする」考え方。そしてそれは子どもたちの可能性や自主性も、「授業」そのものの可能性も広げている Photo by iStock