子どもたちが自分たちで作り上げる「ネット授業」

ところが、前原小学校の取り組みは少し異なる。
冒頭で朝の会の児童の報告を紹介したように、子どもたちは自ら学びをつくることから始めなくてはいけない。何をするか、どのくらいやるか、いつまでに終わらせるか。すべての学びをセルフ・プロデュースする。自分に課す課題は、内容、量、期限とすべて自分で決める。

そして、先生たちはその決定を一切否定しない。ただひとつ、言及するのは、全力を出して向上しているかどうかだ。やるのはゲームでもいい。
「やるんだったら、昨日より上手くなれよ」とはっぱをかける。

「学校の学びは日常、一斉課題で、比較対照があって、評価もされます。でも、僕はこの非日常の時間の中で、子どもたちに遊ぶように学んでほしい。この学年では、今までも宿題の課題は出さずに自己調整学習ができるようにという方向でやってきた」(蓑手さん)。

同小の5年生は3クラス。教員になって13年目と中堅の蓑手さんが学年主任で、ほか2人はともに3年目、4年目の若い先生たちだ。
20~30代の彼らは、子どもたちについてよく意見交換する。

夢はありません、っていう子がいます。好きなことがない、やりたいことがない。それってほぼ100%教育の責任なのではないか? と話します。与えられたものだけやればいい、決められたルールの中でやればいい。そんな縛りをほどいてあげたら、本当に好きなものが見えてくるんじゃないか、と」
そうなってもらうには、教師はどうしたらいいのか。そこで出てきた結論がこれだ。

もっと遊べ。

なぜなら、課題を出されれば受け身になる。子どもをほっといて自分でできるのか、という不安を大人は持ちやすい。
だが、蓑手さんたちは「子どもを信じて任せている」と言い切る。実際、課題を与え続けられる人生などない。学びを自分でつくりださなくては、真の成長はない

そのチャンスこそが、今のこのコロナ禍での休校期間ではないか。蓑手さんはそのように考えた。
最初は計算ドリルや漢字ドリルなど、プリント学習に集中した。だが、ある子が「今日は大好きな絵を描く日にしまーす」と言ったり、「作曲をする!」と叫んだりし始めると「だんだん、これもいいんだ、あれでもいいんだ、と発想が自由になってきた」(蓑手さん)

決めた内容はこうして皆が見える場所に書き込まれていく 蓑手さんのnote「ミノテショーゴ」より

なかには、ラジオ番組を制作する子まで現れた。
「は~い、みんなラジオの時間だよ」
自分がDJになり、オープニング曲を決め、流す曲もそのうちオリジナル曲まで作ってしまった。生歌も歌う。取材の数日前は、それをみんなで聴いた。
子どもたちはまぶしいほどの成長を見せている。