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あのファインマンは、量子コンピュータを提唱していた!

天才が実現可能と語った道筋(前編)
このほど、3巻にわたる『「ファインマン物理学」を読む 普及版』シリーズが完結した。

『ファインマン物理学』といえば、物理学の名著として理系のみならず、物理ファンなら一度は手に取ったことがあるはず。もちろんリチャード・A・ファインマンという名前自体、径路積分などの物理学における業績はもとより、洒脱なエッセイやスペースシャトル・チャレンジャー号の事故調査委員会委員長など、さまざまなかたちで多くの人に知られている。

しかし、そんな大天才・ファインマンの現代物理学におけるとても重要な貢献のひとつは、意外にも知られていないのではないか。

「ファインマンは、量子コンピュータの先駆け的な研究をおこなっている!!」

そこで、『「ファインマン物理学」を読む』シリーズの最終巻となる「力学と熱力学を中心として」の中に書かれている「量子コンピュータ」の一節を抜粋して、ファインマン型の量子コンピュータについてここで紹介してみよう。

量子コンピュータとファインマン

現在各国で精力的に開発が進められている次世代コンピュータは、これまでのフォンノイマン型の古典コンピュータとちがって、量子力学そのものを使って計算をおこなう。驚くべきことに、ファインマン先生は、死の数年前に精力的に量子計算の研究をしていた。

ここでは、ファインマン型の量子コンピュータのアイディアを見ていくこととしよう。ファインマン先生は、1982 年に「コンピュータで物理学をシミュレートする」(Simulating Physics with Computers)という論文を書いて、この問題を真剣に考え始めた。

今、われわれが日本語で読めるまとまった教科書としては、『ファインマン計算機科学』(A. ヘイ、R. アレン編、原康夫、中山健、松田和典訳、岩波書店)がある。そこでは、編者のトニー・ヘイが序文でファインマン先生の研究態度に直結する話を披露してくれている。

彼の学習と発見に対する哲学も、この講義に強く現れている。ファインマンは、「専門家」がどのようにやったのかを知るために本を読む前に自分自身で解決すること、いろいろ試して楽しむことの重要性をたえず強調している。この講義を読めばファインマンの研究方法について、他では得られない洞察が得られる。
(『ファインマン計算機科学』、編者の序、ⅶ)

どうやら、ファインマン先生は、計算機科学の講義をおこなうにあたって、古今東西の専門論文を読み漁るようなことはせずに、主要な問題について自分で納得がいくまで考えてみたようだ。

これは、「創造性」の根本に関係する態度だと思う。

 

科学に限らず、どうやら、文化を「創造」する人々は、まず第一に自分で行動するのであり、他の人々が何をやっているかには、案外、無関心のようなのだ。

もちろん、完全に無関心では、社会が価値を認めてくれる文化の創造などかなわないから、同僚と話をしたりしながら、それなりに周囲で起きていることを見渡すのだろうが、たとえ他人とかぶっていたとしても、とにかく、まず、自分でやってみる習性をもっているようだ。