みずほ佐藤会長が断言「銀行界は根こそぎ『変わる時代』に突入する」

これは日本の死活問題になる
小野 一起 プロフィール

日本の死活問題

佐藤 日本の個人情報保護のルールは、世界の中でも扱いは厳しいほうだと思います。ヨーロッパはもっと厳しいです。しかし、こうした規制は、アメリカは相当ゆるいし、中国ではないに等しい。これは良し悪しの問題ではなく、データを上手く活用するために、利便性を高めることと個人の情報を保護すべきという価値観が、互いに引っ張り合い、国よって対応に違いが生まれているということでしょう。

データの取り扱いのルールは、国家の形そのものです。中国では、国民全ての情報を国が管理しています。最近では北京へ行っても交通違反する人はいないそうです。なぜならカメラで全部監視をされていて、違反すると警告書が届くからです。中国のシステムは、まさに監視社会です。

僕は、中国の高官に『そんなに政府が情報を管理したら、プライバシーを喪失し、国民には不満が鬱積するのではないですか』と聞いたことがあります。そうすると彼に、こう言われました。『あなた達もプライバシーありませんよ。自覚がないだけで、一番危険なのは日本です。日本の購買データなどはすべてアマゾンやグーグルなどに吸い上げられています。私企業に購買データを吸い上げられるより、政府に管理されたほうがいい。安全かつ合理的な世界になり、犯罪さえしなければそんなに悪い世界ではないでしょう』と。

中国はバイオテクノロジーやAIの技術で進んでいる上、データの取得や活用でも圧倒的に優位に立っています。中国のような国と自由民主主義という制度のもとで運営される国が競争したときにテクノロジーの開発や実装化で、どちらが勝つでしょう。30年後の世界では『自由民主主義と言う政治制度があったね。そういう理想郷があったね』と言われかねない。

データの取得や個人情報保護をめぐって中国を巻き込むルールを作らないと、中国だけに異質のルールを作られてしまうでしょう。これは日本にとっては死活問題です。ヨーロッパやオーストラリア、インド、できればアメリカを含めて中国を巻き込んだシステムを作らなければいけません。ただ、アメリカは自国優先主義のトランプ大統領なので、多国間の連携を作るのが難しい。これは危機的な状況だと思います。

 

小野 ハラリは、資本主義が共産主義に勝利したのは、共産主義がデータの集中処理が必要なのに対して、資本主義は、データ処理が分散的だからだと指摘しています。共産主義は、国家が生産手段を握り、すべてのデータを駆使して計画的に生産するシステムです。これに対して、資本主義は、個人や企業が利益というモチベーションで、自由に分散的に活動する仕組みで、共産主義より生産性を高めることができました。

しかし、AIの誕生で、データの一括管理が有用性を高めると、中国が採用している共産主義が社会システムとして優位になりかねない。マルクスが復活してくる可能性に、われわれは十分に警戒する必要があるのかも知れません。

▼4月13日(月)『よこどり 小説メガバンク人事抗争』発売 著者:小野一起

【内容紹介】

自分を失った男たちへのレクイエム!
組織は、あなたからどこまで奪うのか!

メガバンクを舞台に「失われた30年の真因」を問う、緊迫のエンタテインメント。

「細部の圧倒的なリアルさ。銀行小説の新たな金字塔だ」――楡周平(作家)
「失われた30年の真因と処方箋が鮮やかに浮かび上がる」――冨山和彦(経営共創基盤CEO)

【ストーリー】

AG住永フィナンシャルグループの広報部長、寺田俊介は記者とのインタビュー中に
社長の竜崎太一郎が漏らした一言から、自らの出世の可能性を嗅ぎ取る。
吸い寄せられるように竜崎に服従する寺田は、経営難に転落した大手不動産をめぐる情報戦や大手証券との再編、バランスシートの膿、竜崎と相談役の人事抗争…と次々に訪れる難題に直面。掟破りの手段へと手を染め、メガバンクを覆う深い闇へと足を踏み入れていく――。

元共同通信日銀キャップの著者が本作『よこどり 小説メガバンク人事抗争』で巨大銀行の仁義なき権力闘争に迫る!

【著者】

小野一起(おの・かずき)

本名、小野展克(おの・のぶかつ)。1965年、北海道生まれ。慶應義塾大学卒。共同通信社の記者として、メガバンクや中央省庁等を担当、経済部次長、日銀キャップを歴任。現在は名古屋外国語大学教授、世界共生学科長。2014年に『マネー喰い 金融記者極秘ファイル』(文春文庫)で作家デビュー。本名の小野展克で『黒田日銀 最後の賭け』(文春新書)、『JAL 虚構の再生』(講談社文庫)など経済系のノンフィクションの著書多数。