みずほ佐藤会長が断言「銀行界は根こそぎ『変わる時代』に突入する」

これは日本の死活問題になる
小野 一起 プロフィール

GAFAの幹部が「一番意識していること」

小野 検索で簡単に知識が入ることで、かつては人間の中に蓄積されていた知識のアウトソーシングが進んでいると感じます。それにともなって、人は思考の主体であることすら放棄しつつあるのかも知れませんね。

佐藤 GAFA(グーグル、アマゾン、フェースブック、アップル)のハイレベルの経営幹部の子弟ばかりを集めた小学校が、アメリカの西海岸にあるそうです。その小学校では全学年、スマホを持たせないと聞きました。スマホでビジネスをしている人たちの子弟なのに、なんとも皮肉です。

〔photo〕gettyimages

これが意味しているのは、利便性の高いものが、いかに人間の思考能力や教養を阻害していくかということです。GAFAの幹部が、それを一番強く認識している。これを踏まえて、最初の質問に戻れば、こう言えるでしょう。自己の喪失、あるいは自分を構成する力がなくなっていくこと自体が、金融にとっても非常に重大な問題です。

中央銀行による金融政策は、マネーの供給量を調整することで経済や社会をどういう状態にするのかを決めるベースの一つです。そして銀行は、企業や個人への資金提供を通じて、企業の存続や個人の人生に、ある種のスタンスを取ることになります。そう考えると金融は、企業経営や個人の生き方に、非常に強くかかわり、影響を与えます。だからこそ、金融に与えられた責任は、すごく重くなっています

2つ例を挙げましょう。企業活動でいえばSDGs(持続可能な開発目標)に金融は影響を与えることができます。例えば、環境破壊を進めている企業に対しては、金融機関の社会的責任として、融資しない原則を示す。こうすれば金融の力で、環境保全を進めることができます。

小野 金融の在り方は、企業の在り方と合わせ鏡です。ある意味、金融の在り方は、世界の在り方を規定していきますね。

 

佐藤 もう一つの例は、個人についてです。まず資産運用を担う金融機関が投資家に追う責任であるフィデューシャリー・デューティが重要です。80歳のお年寄りが余裕資金を運用したいと考えた時に、銀行がリスクの高い新興国通貨立てのハイイールド債を販売していたケースがありました。でもそれは、間違いですよね? お年寄りが、これから10年、どう余生を送り、どう人生を仕舞いたいかを銀行員が徹底的に聞きこんで、それに合わせて情報提供すべきです。

お年寄りの中には、ご自分で決められない方もいる。だからこそ、銀行員は、個人と、もっと深く寄り添わなければいけない。個人に対しても金融機関の責任は、ますます重くなっていきます。