コロナで世界経済激変…アベノミクスが振り出しに戻る「厳しい現実」

専制支配、老人支配、そして諸々延期…
河東 哲夫 プロフィール

財政赤字がインフレを生まない時代

そして危機の際、政府が多額の救済資金を放出しても、その多くは企業の帳簿に残るだけで、市場に全額が即時出ていくわけでもない。仮に出たとしても、ハイパー・インフレは起きない。なぜなら、価格が上がれば、モノ・サービスの生産は迅速に増えるし、足りない分は輸入できるからだ。

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近年、先進国は中国を中心とする低賃金国からのモノの輸入で、景気刺激のためにカネ余りになってもインフレにならない、稀有な状況下にある。

終戦直後の日本、そしてソ連崩壊直後のロシアでは、それまで当局が発行してきた通貨類が市場にあふれ、それぞれ1万%以上、6000%のハイパー・インフレとなったが、これはいずれの場合も、国内の生産能力が著しく低く、かつ輸入のための外貨も欠いていたために起きたこと。

今の先進諸国は増産、輸入、そのいずれもできるのである。「財政赤字・通貨増刷はその通貨への信用を失わせ、レートの暴落と高インフレを招く」というこれまでの公理は、修正されてしまっているのである。

だから、最近先進国の政府は、以前ならバラマキだと批判されただろう政策を気安に連発している。トランプはコロナ・ヴィールス対策に500億ドルもの予算を約束し、安倍内閣も学校閉鎖で被害を受けた家庭への補償措置を素早く発表している。

日本では「総理官邸」が財務省を抑え込んでいるので、大胆な政策を取ることができる面もあるが、その一連の所得補填的な政策は、この数年、先進諸国ではトレンドになりつつあるものである。

 

ロボットの多用等で生産性が上がる一方で、就職口は減少するような先進国社会では、政府が市民に金を配ることで経済が回るようになってきているのである。パラダイム(基本的なモノの考え方)は、ここでも変わってきている。

ただ、現在の米当局による過度とも言える反応が物流・生産を阻害すると、一時的なモノ不足、あるいは価格暴騰が起きるだろう。