思わず感動! わが身を捨てて「家」を修復する「兵隊アブラムシ」

「匠の技」が冴えるリフォーム術を見よ
深川 峻太郎、ブルーバックス編集部

悲壮感ただよう「虫こぶ修復」

モンゼンイスアブラムシの兵隊には、コロニーを守るために、もうひとつ重要な仕事がある。

「植物の液をエサにしているアブラムシにとって、虫こぶは住まいであるだけでなく、食べものでもあるんです。つまり、虫こぶは栄養満点な状態になっているんですね。しかしそれは、鳥やガの幼虫などにとってもご馳走となるわけですから、とても狙われやすい。とくに虫こぶが急激に大きくなる春先は、壁が薄くてやわらかいので、簡単に穴を開けられてしまうんです」

虫こぶにできた穴は、放っておくと大変なことになる。植物の組織が乾燥して死んでしまい、ついには虫こぶそのものがダメになって、中にいるアブラムシが全滅してしまうのだ。そこで、またしても兵隊アブラムシの出番となる。今度は虫こぶの修復である。

「修復」と聞くと、最初に幹母がゼロから虫こぶを作ったのと比べて、穴をふさぐだけなのだから簡単だろうと読者も思われるのではないだろうか。

しかし、沓掛さんが実況しながら見せてくれた動画は、壮絶だった。

  虫こぶの穴をみごとに修復する兵隊アブラムシ。しかし、痛ましい最期を迎える者もいる

「虫こぶの穴は、私が実験のために開けました。すると、まず近くにいた一匹が、お尻の角状管から白い体液をドバドバと放出したんです。おそらくこの液の中に、仲間を集めるフェロモンのようなシグナルがあるのでしょう」

やがて兵隊たちがどんどん集まってきて、みんなで体液を出しはじめた。出すだけでなく、一生懸命に混ぜている。これによって、体液が固まりやすくなるらしい。こうして見る見るうちに、穴はふさがっていった。みごとな匠の技である。

【写真】修復中のアブラムシ
  大量の体液を出して修復作業にとりかかる兵隊アブラムシ

「しかし、中には自分が体液に塗り固められて身動きできなくなってしまったり、穴の外で作業をしていて修復後に取り残されてしまったりする兵隊もいます。そうなると、そのまま死んでしまいますから、ほとんど捨て身の仕事です。生還できたアブラムシでも、体液を大量に出して体が3分の1ほどに縮んでしまっているので、すぐには死ななくても、生ける屍のような状態になってしまいます」

兵隊アブラムシが出す体液は、いわば血液のようなものだそうだ。「血税」とは、もともとは徴兵制度を意味する言葉だが、アブラムシの兵隊はまさに、自らの血を大量に提供することで、仲間の暮らしを守っているのだった。嗚呼!