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もはや神頼みしかない? 日本人は「感染症」にどう対処してきたのか

感染症の民俗学

正体不明の"疫病"

中国武漢から発生し、日本を巻き込んで世界中で猛威を奮う新型コロナウイルス(COVID19)。今月11日にWHO(世界保健機関)のテドロス事務局長が「パンデミック(世界的流行)を宣言し、感染拡大が衰える気配は見えない。

このウイルスが恐ろしいのは"新型"であるためだ。未知の感染症は、どのように拡がっていくのか、病原体はどのような性質を持っているかといった"正体"が見えないため恐怖感をより一層増幅する。

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私たちが住む日本列島は、歴史上繰り返し流行病に襲われてきた。古代から中世・近世までの日本人は、正体不明で治療が困難な疫病を、目に見えない存在がもたらすものだと信じてきたのである。その原因であるもののけや怨霊、悪鬼を除くため、神仏に祈りをささげてきた先人たちの労苦をこの機会に顧みておこう。

天然痘大流行は大仏建立を促したのか

近世以前の日本を襲った感染症で、死亡率が高く、流行すると多くの人々が命を失うことで恐れられたのは、天然痘と麻疹(はしか)である。

このうち天然痘が最初に日本で大流行したのは、天平7年(735年)の初夏で、九州の太宰府を中心に北九州で猛威を振るった。

 

「続日本紀(しょくにほんぎ)」の天平7年5月23日付の勅に、「災異が頻々(ひんぴん)と起こっているが、これは天地からの咎(とがめ)の徴(しるし)で、…施政者としての責めは予(われ)にある」と、時の聖武天皇は自責の念を抱いた。

そこで天皇は、災害を消除し、国家を安寧ならしめるため、宮中と大安寺、薬師寺、元興寺、興福寺で、「大般若経」の転読(経典の一部を読んで全巻を読誦したものとすること)法要が行わせた。