「感染源は日本人」を親日国インドネシアの豹変と捉えてはいけない

それは本当に日本人への差別なのか
大塚 智彦 プロフィール

インドネシアは親日国という誤解

インドネシアは東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の中でもタイと並ぶ親日国と言われ、それを前提とした論評もよくみられる。しかし太平洋戦争で日本軍が侵攻して占領、独立を約束しながらも敗戦でそれを反故にしたことは歴史の事実である。

戦後、多くの元日本兵が残留して、インドネシア軍とともにオランダなど連合軍との戦いに従事、独立を側面支援した。それも歴史の事実であり、そうした元日本兵の活躍にはインドネシア人は惜しみない敬意を払う。

その元日本兵の多くが戦後、インドネシア国籍を与えられ、死亡した際は軍の儀じょう隊による軍葬で送られ、戦陣に散った多くのインドネシア兵とともに各地の「英雄墓地」に埋葬されている。

しかし太平洋戦争勃発時に、オランダ植民地だったとはいえ土足でずかずかと踏み込んで一般市民を戦禍に巻き込んだことは、インドネシアの歴史教科書に記されている通りである。そういう歴史教育を受けてきたインドネシア人が心の底から親日というのは、日本人の思い過ごしであるともいえる。

実際、こちらが日本人とわかれば日本への関心と感謝、好感を示すインドネシア人は多い。だが、韓国人、中国人に対しても同様の対応をすることを忘れてはならない。

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なぜか? インドネシアは島国であり約300という多民族、約580という多言語、そして多文化によるモザイク国家の一面も色濃く残る統一国家である。統一国家としてそれをまとめていく要諦は、「多様性の中の統一」という国是であり、お互いに気を遣い尊敬を示し、相手に同調することであり、それがインドネシア人には「処世術」として身についている。

つまり、日本人の質問、取材に関する意図を理解して、「この日本人はこういう答えを期待しているな」と判断し、それに沿った回答を淀みなく口にするのだ。

試しに全く逆の見方から「日本の侵略戦争として侵攻した罪過」を問う意図で質問すれば、数々の非行、残虐行為、傲岸不遜な仕業を切々と語ってくれることだろう。

 

したがって、筆者が言いたいのは、今回のコロナウイルス騒動で日本人が感染の責任の一端を押し付けられたとしても、それは「親日国インドネシアが豹変」ということではない、のである。