量子コンピュータ「2050年に実現可能」な9つのステップ!

『ファインマン物理学』解説 後編
竹内 薫 プロフィール

さて、状態1 と状態0 は1 キュービットであらわされるが、ファインマン型の量子計算では、計算が終わったかどうかを教えてくれる標識の「カーソル」部分が必要になる。だから、

|0000> 

|0001> 

|0010> 

|0011>

・・・

|1110> 

|1111>
 

の計16 個の状態が必要になる。左の3 つの数字がカーソル部分であり、左から3 番目の数字が1 になっているときだけ、計算が終わったことを示す。

なお、詳細に立ち入ることができないので残念だが、計算の種類が決まれば、カーソル部分の長さ(今の場合は左の3 つ)と計算部分の長さ(\(\sqrt{NOT}\) の場合はいちばん右の1 つ)も決まる。

 

また、生成・消滅演算子のおかげで、カーソル部分は、常に3 つのスロットのうちの一つだけが1 で他の2 つのスロットは0 であることが保証される(だから、計算途中では、\(|1110>\) というような状態は決してあらわれない!)。

上の図は、縦軸が計算途中での各状態の確率をあらわし、\(|i>\)軸は、16 個の状態をあらわし、time は時間発展をあらわしている。

まず、時間0 に状態\(|8>\)(=二進数の8 は1000 なので状態\(|1000>\)を意味する)を入力する。これが時間1 では、シュレディンガー方程式にしたがって、他のいくつかの状態の重ね合わせへと発展する。だが、時間1 でカーソル部分を「観測」したところ、最初と同じ100 のままだった。

カーソルが001 でないと計算の終わりを意味しないので、計算を続行する。ただし、量子力学では、外部から観測すると、重ね合わせの状態が、観測した1 つの状態へと収縮してしまうので、ふたたび\(|1000>\) の状態から計算を始める。時間2 でも同じようなことが起こるが、時間3 では、カーソル部分を観測したところ001 になっていたので、そこで計算を止めて、肝心の計算部分を見ると数字が1 になっていた。つまり、時間3 では、状態が\(|0011>\) (=\(|3>\))に落ち着いたわけ。

それにしても、何度もカーソルを盗み見て、たまたまその最後の桁が1 になっていないかぎり計算は終わっていないことになる。万が一、見過ごしたら、ファインマン型の量子コンピュータは、ふたたび時間発展してしまって、ふたたび長い間待たなくてはならない。

興味深いことに、一般にはこのコンピューターが計算を完了するのに要する時間を予測することはできない。
(『ファインマン計算機科学』、5–6、139 ページ)

近い将来、実用化される量子コンピュータは、必ずしもファインマン型とは限らないが、少なくとも、具体的な計算をシュレディンガー方程式に「載せて」解いて、その答えを抽出する方法を考え出した、という意味で、ファインマン先生のこの分野への寄与は大きい。

ファインマン先生は、量子コンピュータが2050 年までに実用化されるだろう、と予測しているが、はたしてどうなるだろうか。今後の発展が非常に愉しみな分野である。

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