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『ファインマン物理学』解説 後編
竹内 薫 プロフィール

ハミルトニアンとは、量子力学にでてくるエネルギー演算子のことであり、やはり行列であらわすことができる。ハミルトニアンを量子力学的な状態に演算すると、その状態のエネルギーがわかるのである。だから、ハミルトニアンは、古典力学のエネルギーの概念を拡張したものだといえる。

ファインマンさんは量子計算用のハミルトニアンとして、次のような恰好を書き下す。

\[\begin{eqnarray}
H &=& \sum_{i=0}^{k-1} q^*_{i+1}q_i A_{i+1} + \mbox{複素共役}\\
&=& {q^*_1q_0A_1} + {q^*_2q_1A_2}+{q^*_3q_2A_3}+…\\
&+& {q^*_0q_1A^*_1}+{q^*_1q_2A^*_2}+{q^*_2q_3A^*_3}+…\\
\end{eqnarray}\\
\]

ここでは基本的な量子論理ゲートである。また、\(q\) は「消滅演算子」と呼ばれていて、ある状態を消す役割をもっている。たとえば電子が1 個の状態にかけると電子が消滅して電子が0 個の状態になる。\(q^*\)は「生成演算子」と呼ばれていて、ある状態を生成する。行列であらわすと、

\(\left( \begin{array}{cc}
 0 & 1  \\
0 & 0 \\
\end{array}\right)\)および\(\left( \begin{array}{cc}
0 & 0  \\
1 & 0  \\
\end{array}\right)\)

になる。試しに、\(q\) と\(q^*\)を状態\(|1>\)および\(|0>\)に演算してみれば、たしかに生成・消滅をあらわすことがわかるだろう。

 

生成・消滅演算子は「昇降演算子」とも呼ばれる。量子がミクロの回転をしていると考えて、それを「スピン」と呼ぶ。スピンはデジタルなので、たとえば電子のスピン状態は(軸が)上向きか下向き、つまり\(|1>\) か\(|0>\)の2 種類しかなく、中間のスピンは存在しない。昇降演算子は、スピンを下から上へ昇らせたり、上から下に降ろしたりするのである。

\(q\)  も\(q^*\)もNOT とはちがう。たとえば、

\[NOT |0> = |1>\]

であるが、

\[q |0> = |0>\]

である。電子が0 個の状態は、それ以上、消滅させることができないからだ。あるいは、スピンが下向きなら、さらにスピンを降ろすことはできない。

ただ、容易にわかるように、

\[NOT = q + q^*\]

と書くことができる。

ちょっと問題を整理しておこう。

量子力学の基本方程式は、シュレディンガー方程式と呼ばれており、こんな恰好をしている。

\[i\hbar\frac{d\psi\left(t\right)}{dt}=H\psi\left(t\right)\]

\(\psi{\left(t\right)}\)は量子力学の状態をあらわし、それは時間によって変化する。時間ゼロのときの\(\psi{\left(0\right)}\)は量子コンピュータへの「入力」と考えられる。そして、ある時間のときの状態\(\psi{\left(t\right)}\)が「計算結果」という次第。この方程式の解は、指数関数(\(exp{\left(x\right)}\))を用いて、
\[
\psi\left(t\right)=exp\left(-iHt/h\right)\psi\left(0\right)
\]

と書くことができる。hは「プランク定数」という量子力学に特有の自然定数であり、\(i\) は虚数単位(\(i^{2}=-1\))。

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