人間の「献体」と「解剖」…その知られざる手順をご存知ですか

こうして「命」はつながっていく
小泉 カツミ プロフィール

亡くなったその日に…

では、実際に献体登録者が亡くなると、どんな経緯で献体に至るのか。美香さんが言う。

「うちの場合は、特に宗教がないので、お通夜や告別式もしませんでした。だから、亡くなった直後に日医大に連絡して、その日のうちに遺体を載せるストレッチャーが入る車が来ました」

通常ならば、通夜、告別式を済ませてから引き取りにくるケースがほとんどらしい。

「それからは、私たち遺族は特に何もすることもなく、後日盛大にお別れの会を開きました。父の場合も母の場合も遺骨が戻ってきたのは、2年後くらいでしたね」

献体の「意義」

日本篤志献体協会の資料によると、献体の理念とは「医の倫理に立脚した良医の育成を目的とし、無条件・無報酬で自己の遺体を提供すること」とある。

この献体の歴史はきわめて新しい。

「解剖学実習」が、医学・歯学教育の中で、最も大切な基礎となる課程といわれながら、実習に必要な遺体が不足し、解剖学教育に大きな支障をきたした時代があった。
特に、昭和30年、40年代には医学教育の危機と言われるほど遺体が不足していた。そのため医科大学や歯科大学の職員が高齢者施設などに出向き、また警察などで身元不明者の遺体の提供を願い出たりしていたのだ。

前出の小澤教授が言う。

「それが、1983年(昭和58年)に『献体法』という医学と歯科学の法律が国会で決議されて、国の認めた法律として献体を国がバックアップすることになったんです。私が1984年に大学を卒業して、その時に母校の恩師の解剖学教授が解剖学会の理事長をやっていて、ちょうど献体を法制化するというタイミングでした。私はまだ学生でしたが、教授から『いつかこの重みが君らにもわかるからな』と言われたのを覚えています」

 

日本医科大学では、毎年、その年に献体された方の遺族への「返骨式」、さらに献体のみならず、病理解剖、法医学解剖など解剖に遺体を捧げた故人のための「慰霊祭」も行っている。

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