夫の実家が大反対

一方、元夫の実家は九州の田舎で遠かったこともあり、千恵さんは義父母と会ったことはなかった。そもそも元夫は、千恵さんの存在をとくに話してはいなかった。まずは元夫が電話で報告したのだが、予想以上に厳しい反応だったらしい。

「元夫によれば、義母の第一声は『順番が違う』だった、って。その後も、何度も泣きながら電話がかかってきた、って」

え、でもだってどうするの、私は産むよ? 千恵さんの意思ははっきりしていた。元夫も「もちろん、俺も産んで欲しいと思っている」と言った。 

夫の実家は怒っているけれど、結婚と出産に向かっている。それは間違いがなかった Photo by iStock

とにかく頭を下げに来いとのことで、元夫と千恵さんはその月の連休を利用して実家を訪ねた。義母はまるで敵を見るような目で千恵さんを見た。そして、息子である元夫に向かい「何か言うことはないの」と言った。元夫は「すみませんでした」と頭を下げた。

「何謝ってるんだろうこの人、と不信感を覚えました。たしかに順番が違うと言えばそうかもしれませんが、私たちも30歳になろうとしているいい大人。責められる言われはない。だから、義母に『あなたはどう思っているの』と聞かれて私は『すごくうれしいです』と正直に答えました」

義母は「発展家ね」「都会のお嬢さんは違うわね」と嫌味たっぷりに繰り返した。そして、「できてしまったものは仕方がない。でも、これはわが家の歴史始まって以来のこと。親戚の手前もあるから、入籍や式のタイミングについてはこちらに任せてちょうだい」と言った。

千恵さんは内心、「義父はふつうに市役所勤めだし、そんなたいそうな家でもないはずなのに、何を大げさな」とは思ったものの、これから長い付き合いになる相手なのだからと気持ちを収め、「非常識でしたかね」と神妙な顔だけしてみせた。