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非モテの高学歴男子が「かっこいい」の研究して、本物の男になるまで

『最後の秘境 東京藝大』の次なる舞台

女の子と手をつなぎたい、本気で打ち込めるスポーツがしたい、素人でもトロフィーを狙える――。期待と不安が入り混じるなか、勇気をもって踏み出した先は想像を超える「異世界」だった…。

大ベストセラー『最後の秘境 東京藝大』の著者、二宮敦人さんが、次なる執筆の舞台に選んだのは母校である一橋大学の体育会「競技ダンス部」。そこで大学四年間を捧げた『「競技ダンス部」へようこそ』が上梓された。本稿では本に書ききれなかった「おかしな世界」を特別に公開する。

ね、私と踊ってくれない?

社交ダンスには酷い目にあわされた。

僕は踊れる作家である。大学時代に競技ダンス部に入って、四年間がっつりと踊りこんだからだ。ちなみに競技ダンスとは、社交ダンスで優劣を競う、一種のスポーツである。我が母校の競技ダンス部は、全国優勝を目指して切磋琢磨し、プロダンサーも幾人か輩出する、本格的な体育会でもあった。

僕は中学、高校の思春期を男子校で過ごしたこともあり、良くも悪くも、女性に幻想を抱いているタイプであった。とはいえそれを自覚し、ちゃんと女の子がいる部活に入ろう、と考えたこと自体は素晴らしい判断だったといえる。今のうちに出会っておかないと、一生困りそうな気がしたのだろう。

また、僕は中学、高校を美術部で過ごし、体育祭はずる休みするような人間であったため、ほんのりとスポーツに憧れを持っていた。練習、汗、ライバル、勝利。縁遠い世界だと諦めつつ、どこかでチャンスを欲していた。

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そんな僕が、思い切って体育会に飛び込んだのも、なかなかの英断であった。

問題はそれが、競技ダンス部だったことだ。

競技ダンス部の新歓は、大変華やかである。

男女比が一対三くらいであることを活かし、綺麗な女子大生を全面に押し出してくる。

一年生は左右を女性の先輩に囲まれ、腕をつかまれながら「ね、私と踊ってくれない?」と勧誘されるのだ。嬉しいを通り越して赤面しかできず、頷かざるを得ない。

 

連れていかれる先は飲み会ではなく舞踏会、コンパではなくダンパ。新入生歓迎ダンスパーティーである。お酒を飲みながらワルツやルンバの手ほどきを受けるのだ。大学合同のダンパもある。貸し切りのダンスホールに、正装した各大学の新入生が集まり、ダンスで交流するのだ。なんと優雅な世界だろう。楽しい大学生活が始まる予感しかしない。

やがて、デモンストレーションを見せられる。先輩たちの本気のダンスを見学するのだ。