コロナ危機、“科学を軽視する”安倍政権の「限界」

大震災・原発事故の教訓はどこへ…
山下 祐介 プロフィール

必要となる三つの手続き

さて、この目に見えない恐怖との闘いを制するには、次の三つの手続きが不可欠である(その補助項目とともに示す)。

(1) リスクの原因となっているものを、科学的に目に見える状態に、可能な限り持って行くこと[リスクの可視化]

(1)補 そのための科学情報の高度化を図ること。またその情報を適切に流通させる制度の充実

(2) そうして得られた状況証拠(データ)を元に、適切に科学的分析をほどこして、何がおきているのかを予測し、よりリスクの低い方法で危機を乗り切る手段を見出し、実現していくこと[科学的知見の形成と、その政策への活用]

(2)補 そうして実施された手段(政策)がどういう効果があったのか(なかったのか)、随時リアルタイムで観察検証し、次の手段へのフィードバックを行うこと

(3) (1)(2)を速やかに情報公開して人々(people)と共有(public)し、不安や恐怖を取り除くこと(政府と科学への信頼がその政策の精度を高め、リスクの軽減を実現する)[情報の公開とその共有]

(3)補 そのために、政府・メディア・国民の情報リテラシーを極限まで高めること

9年前の原発事故は大量の放射性物質をまき散らし、日本国内のみならず、世界中にその恐怖を広げた。

だがそこには当初、「想定外」ではじまり、その「想定外」に見合った、これまでにない対応がとられるはずだとの期待もあったし、また現実にそれは進んでいるかに見えた。

 

しかしそれはいつの間にか変転し――その異様な変転を筆者は本紙記事「復興政策に「異様な変化」が起きている」に描いておいた――この3つの手続きがほぼ実現されないまま、9年がたってしまった。

それどころかいまや、被害者への賠償切り、支援切りが断行され、安全への不安を抱えたままの原地帰還が進められている。