ピーテル・ブリューゲル「死の勝利」、by CGFA

コロナ危機の深刻な課題を見通した、カミュ『ペスト』の凄み

自由がなくとも安全があればいいのか

コロナも、経済の動揺も、いつかはおさまる。しかし、カミュがペスト菌によって喩えた全体主義体制は死なない。「自由がなくても安全であればよいのか?」という問いから顔をそむけることはできない。

カミュの『ペスト』がいまの日本と重なる

3月11日公開の「新型コロナウイルス不況、世界の経済活動はどこまで落ち込むのか?」で述べたように、中国から広がった新型コロナウィルスの感染が、日本を含む世界各国に拡大し、予断を許さない状況になっている。

この状況の中で、多くの人が、アルベール・カミュの『ペスト』を思い出したようだ。この小説は、日本で突然ベストセラーになって、品切れになってしまった。

あらすじを紹介すると、つぎのとおりだ。
 
小説の舞台は、アルジェリアのオラン。そこで突然ペストが発生し、つぎつぎと人命が奪われていく。市は外界から遮断される。あらゆる試みは挫折し、ペストは拡大の一途をたどる。

小説『ペスト』が突然ベストセラーになってしまったのは、オランの町の状況がコロナウィルスの感染が広がるいまの日本と重なってしまうからだろう。

 

確かに、後手後手に回る行政の状況は、いまの日本とそっくりだ。しかし、この小説の目的は、行政の対応の鈍さを批判することではない。

アルベール・カミュ/photo by Gettyimages