算数の教室で、米国人少女の「ある笑顔」を前に私が思わず涙した理由

「楽しい」授業のためにできること
冨樫 耕平 プロフィール

このような問題は、このクラスのなかだけではなく、世界のいたるところで起こっていることを、このとき、改めて実感したからです。

授業を楽しんでいる生徒と、そうでない生徒。その両者の学習経験の間には、積み重ねられた大きな差が存在するのです。

教育の「弱点」は克服できる

あの算数の授業を原体験とした私は、「行動科学にもとづいた教育の実践」ですべての子どもたちが授業を楽しめるようにするため、研究を重ねています。

ですが、ほかの教育アプローチと同様に、簡単に完璧な解決策になるわけではないこともわかっています。

 

行動科学にもとづいた教育は、各生徒の学習行動について頻繁にデータを集め、そのデータを検討し、ひとりひとりにあわせた指導をデザインしたのちに実施します。結果、このような教育アプローチには、とても多くの時間、資金、人材などの資源が必要となります。

簡単に言ってしまえば、目に見える(客観的な)高い効果が期待される一方、とても手間がかかるのです。

Photo by Austrian National Library on Unsplash

このような行動科学にもとづいた教育の「弱点」は、情報通信技術(Information and Communication Technology:以下、ICT)の活用によって克服できると考えられます。

たとえば、各生徒の学習行動に関するデータ集めやフィードバックを自動化できれば、教育現場で指導にあたる先生方の負担を抑えながら、行動科学にもとづいた教育を導入することが可能となります。

もし、行動科学とICTとを掛け合わせた教育が、私が米国で見たあの算数のクラスで実施されていたら、きっと、あの2人の女の子の様子は違っていたことでしょう。

個別化されたフィードバックが生徒全員に頻繁に与えられれば、 彼女たちはスムーズに学習を進め、自信をつけ、楽しみながら算数の授業に参加していたことでしょう。

もちろん、教育現場にただICTを導入するだけでは、生徒ひとりひとりにあわせた教育は実現しません。

集団に向けた平均的な教育があっている・ついていけている子どもたちについては、ICTの導入だけで「ひとりひとりにあわせた教育」を実現することができるかもしれません。

しかし、障害などの特別なニーズを持ち、ひとりひとりにあわせた教育を本当に必要としている子どもたちには、もっと踏み込んだ、専門的な介入が必要です。

障害の有無などにかかわらず、生徒ひとりひとりの学習行動を科学的に分析し、変化させられる「行動科学の専門家」と、そのような教育アプローチをICTの活用を通じて現実化できる「ICTの専門家」との連携が必要だ。そう私は考えています。

実際にどんな連携ができるのか。私はまず「英単語を覚えるアプリ」の試運転から第一歩をはじめることにしました。

読者の皆様も、「ひとりひとりの子どもにあわせた教育」を単なる理想で終わらせないための活動を一緒にはじめませんか。


【冨樫耕平氏の「ブルーバックスアウトリーチ」プロジェクト「アプリで英単語を覚えまくるイベント開催! スマホで学習困難を乗り越えるために」はこちらから概要を見ることができます。よろしければぜひ!】

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