算数の教室で、米国人少女の「ある笑顔」を前に私が思わず涙した理由

「楽しい」授業のためにできること
冨樫 耕平 プロフィール

事実、行動科学の有効性は、40年以上にわたって蓄積された科学的根拠に基づいて支持されています。

米国では、行動科学にもとづいた支援が、ASDの第一選択治療として用いられています。ASDの診断を受けた子どもが行動科学を使った支援や教育を受ける場合、50州すべての州で保険適用になると法律で定められています。

日本でよくある「なんちゃって行動科学」

日本でも、ここまで述べた行動科学の同意語として、「応用行動分析(Applied Behavior Analysis:ABA)」という言葉がはやりつつあります。

しかし、教育や臨床の現場では、「ABA」と呼ばれながらも、本来のABAにもとづいた教育や支援がなされていないことが多いです。

 

なかには、「米国で行動科学の専門資格を得た」というカンバンで人気を集めている人たちもいます。ですが、こうした人たちのなかには、子どもたちやご家族の利益を無視して、お金儲けのことだけを考えている人もいます。

私もある現場で、表では格好いいことを言いながら、裏では発達障害をもつ子どものご家族の悪口を言いながらお金の勘定をしている人を見たことがあります。怒りを越えて、憤りに近いものを感じました。

このような人たちに「応用行動分析」「ABA」「行動科学」などという言葉を使ってほしくありません。

そもそも、このような「芸」(技術)だけを身に付け、「道」(人としての道や道徳)を欠いた人たちを、「教育者」や「専門家」などと呼んでいいのでしょうか。彼らが子どもたちに提供しているものは、私たちが目指すべき本来の教育なのでしょうか。

こうした現場での経験を通して、私は自分の人生にひとつの目標を立てました。

「日本に住むすべての子どもたちが、障害の有無、住んでいる場所、置かれている経済的・社会的状況などにかかわらず、質の高い教育を受けられるようにすること」

この目標の実現に向け、私は行動科学の研究と実践、法律の整備が日本よりも進んでいる米国へ留学することを決心しました。

渡米費用がない、どうする?

そのころの私は大学院を修了し、日本で働きながら学び続けていましたが、限界を感じるようになっていました。世界トップレベルの専門家のもとで、さまざまなものを実際に目で見たり、触れながら学ぶことが、自分の目標を達成するために絶対必要だと確信したからです。

留学に至るまでには、たくさんの壁がありました。壁にぶち当たるたびに、困っている子どもたちやご家族の様子が目に浮かび、「早く米国へ行き、学ばなければ」と焦る気持ちばかりが強くなりました。すでに「留学をしない」という選択肢は、私の中から消えていました。

留学を開始してしまえば、大学院に通いながらティーチング・アシスタントなどの大学の仕事をしながら学位を取得できる可能性があります。しかし、それまで学ぶことに投資をし続け、収入も低かった私には、米国に行くための飛行機代も、現地で寮やアパートを契約するための費用すらも、用意することができませんでした。

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