世界一高い2億3000万円の新薬「自己負担額6000万円」は本当か

医師が疑問と誤解に答えます
小島 勢二 プロフィール

日本の保険医療財政への影響は?

Yahoo!ニュースでは「もはや日本の国民皆保険が崩壊するのが見えてきた。外国の民間保険会社がほくそ笑んでいる」などと保険医療財政への悪影響を心配するコメントが多数ある一方で、「ゾルゲンスマを必要とする患者数は極端に少ないから、国民に大して迷惑はかけないだろう」というような楽観論も散見された。

昨年、キムリアに3349万円の薬価がついた時も、根本厚労大臣は「対象となる患者数は250人程度なので、医療保険財政への影響は限定的だ」と発言した。しかし表に示すように、ゾルゲンスマに続く高額の遺伝子治療薬の上市が続々と控えている。

日本ではSMAのような希少疾患のみならず、患者数6000人の血友病に対する遺伝子治療の治験がすでに始まっているほか、患者数2万人の筋ジストロフィーの治験も計画されている。こうした高価な遺伝子治療薬の開発状況を知れば、楽観論に与することはできない。

「募金を集めて基金を作り、そこから2億円を払って投薬を受ける仕組みはできないでしょうか」とか、「健康保険の適用外として、クラウドファンディングで募金したら」といった意見も多い。なかには「ZOZOの前澤さんに薬を買ってもらって、必要な患者さんに配って欲しいです」と篤志家に期待する声もある。

 

海外で心臓移植を受ける患者さんのように、患者数が限られていればこうしたアイディアもありだが、先に述べたように今後遺伝子治療を必要とする患者数はうなぎ上りに増えると予想される。海外では、製薬会社から高額な遺伝子治療薬を購入するのではなく、患者団体が寄附金を集め、その募金で研究者を支援して遺伝子治療薬を製造する仕組みが成功している。